工事が止まってほしい

有光智彦

2011年04月21日 21:41

東江の小さな海は次第に次第に小さくなっていきます。

写真はクリックすると多少大きくなります。



生きものたちのことを思うと心が痛いです。



連日何台も何台もダンプカーが砂を積んできます。



でも,まだまだ生きものたちは生きている。
半分埋まっても,1/4になっても途中で工事を止めてほしいのが
本心です。



白濁した海に入り埋まり行く生きものの姿を撮影することは,
心身共に疲れます。でも,この機会を逃すと埋め立てというものの
実態を伝えることができなくなります。

水深3~4メートルの海底はまるで夜のように真っ暗です。
潜水は,水面から一気に海底へ降下します。白濁は海面から3メートルまで
続きますが水中は濁った深緑色の不気味な世界です。
海底まで1メートルのところで突然視界が開けます。



そのような中でも生きものたちはなんとか生きているのです。

砂で埋められていくきわにある生きものたちも最後の最後まで
生きようとしています。魚たちも自分たちの住処から離れようとは
しません。



4月15日現在の現場の様子を図示してみました。
こんな感じになっています。



下の写真は砂で埋められていく縁の海底の生きものたちの状況です。

ソフトコーラルの子どもです。左が実際の水中の様子で,
右側が画像を補整して見やすくしたものです。
実際は海底に光がほとんど届かない状態です。



以降画像は補整した状態で表示します。
投入されている砂には貝殻などが混じっていて,波の影響で大きめの貝殻
などが砂の斜面に堆積しているのがわかると思います。
崩れ落ちる貝殻などに生きものが埋まっていくのです。

サンゴが埋まっていきます。



ナマコにも砂が迫ります。



砂の縁から少し離れたところに紫色のサンゴの兄弟がいます。
大きさはどちらも25㎝ぐらいで細い枝がとても美しいサンゴです。
左が工事前の時の写真で右が現在の様子です。



撮影は1時間が限界です。腐敗した海水と白濁により船酔いのような
状態になってしまいます。
しかし,それでもこのブログを見る人に伝えずにはいられません。
生きものたちのためにも。

このように悲観的な内容で書いていますが,今ここで工事を止めれば
助かる多くの命があるのです。
わずかでも希望を持っていたいと思います。

白濁は砂を投入している場所が近いほど濃く,大型の塊状ハマサンゴが
あるところは伸ばした自分の手が見えないほど視界がありません。
下の写真は砂を投入する前に写した元気なハマサンゴの写真です。



このハマサンゴの一番上にはいろいろな海藻が生えていて,いつも小さな
魚たちが泳いでいたのです。



現在はほとんど何も見えません。



塊状ハマサンゴは高さ約3メートル,基底部の周囲約12メートルと
巨大です。推定年齢は300年,最初は1ミリぐらいのプラヌラ幼生から
始まった命の営みなのです。
ハマサンゴの表面は,つるっとして生きているのかどうかわからない
ように見えますが,拡大して見てみると小さな無数のポリプの存在が
わかります。



現在は工事による微細な砂が絶えずポリプの上に降り注ぐために,
写真からではポリプがどうなっているかよくわかりません。
大丈夫でしょうか。



ハマサンゴは1年に1㎝の成長速度と言われています。
相次ぐ埋め立てや護岸工事,世界的な白化現象にも耐えて今日まで
成長を続けてきた生きものです。海底から積み重なるような形で成長の
記録が残っています。ハマサンゴの南側は死んだ部分が多く,北側は
海底付近から一番上まで生きています。
サンゴの研究者の話では,南側に位置する世冨慶川の河口の位置の変化や
潮の流れ,水温など様々な環境の変化により現在のハマサンゴの形と状態が
出来ているそうです。300年ぐらい名護湾の変化がこのハマサンゴの骨格に
刻みつけられているのです。私は畏敬の念を感じます。
この生きものがこれからも生き続けられるように配慮することが,
大切ではないでしょうか。
また,死んだ部分は,それで終わりではなく,その部分にはウニや貝類が
住み着いています。自然界には何一つ無駄なものなどありません。
必ずなんらかの役目があるのです。
いつも4匹のグルクンの子どもたちが,このハマサンゴおじいの周りを
泳いでいました。来るたびに今日も元気だなあと思って見ていましたが,
あのグルクンは今どうしているのでしょうか。
この大きなハマサンゴとその周辺にはたくさんの生きものたちとの
つながりがありました。それを営みと表現することができます。

下の写真は工事開始前までに埋め立て予定区域の海底から拾い集めた
貝殻です。その種類からも,この海がどんなに豊かであったかが
想像できると思います。



また,下の写真は海底から一握りすくってきていた海底の砂です。
この砂を虫眼鏡で観察すると,サンゴのかけら,さまざまなウニの棘,
巻き貝の殻,星砂の遺骸などたくさんの生きものたちの生命の痕跡を
見つけることができます。



みなさんも浜辺に行かれたときに砂を手のひらに載せて観察してみて
ください。その海に住んでいる生きものの種類がわかります。


私たちは人間社会の中で生活をしています。
だから何の不思議もなく私たち中心の考え方で生きています。
かつて私もそうでした。
でも,生きものの側に立って考えると,現在全国各地,世界各地で行っている
自然に対する開発が人間の都合でしかないことに気が付きます。
それがたとえ人間の安全を守るための防災のためであっても。

人間が世界中に増えすぎてしまいましたが,これからも今までどおりの
スタンスで人間社会を続けていくのではなく,生きものとの共存を
目指さなくてはならないように私は思います。
出来るだけ自然のままに残すことや工事をする場合でも出来る限り自然界
への負荷を減らす対策をとることが必要だと思うのです。

私たちとさまざまな生きものは,同じ祖先といわれています。
そして,この身体はまぎれもなく地球の資源で構成されています。
みんな同じです。つまり人間も自然の一部だということです。
その自然を破壊することは自分自身を破壊することではないでしょうか。
一人一人がそのことをよく考えなくてはならないでしょう。

みなさんはどう思われるでしょうか。

東江の海に夕陽が没します。サバニが金波銀波の波間を進みます。



夕凪の海をみながら工事前の素敵な東江の小さな海を思い出して,
ため息を一つつきました。




よかったら市民の会のブログも見てみてください。
http://jisedai.ti-da.net/

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