埋め立て

有光智彦

2011年05月23日 02:38

小さな写真はクリックすると多少大きくなります。

先日の台風1号の時,汚濁防止膜の損傷を防ぐためなのか一時的に
撤去されました。この時,白濁は現場周辺に拡散し,連絡を受けて
見に行くと,その日も白濁は流出を続けていて世冨慶方面に流れて
いました。





汚濁防止膜というのは海面のフロートの下に厚手のビニール
の膜が海底近くまで下ろされていて,それぞれの継ぎ目はひもで
結んでいるだけのお粗末な代物です。
宮古島の海中展望塔の工事も周辺のサンゴをことごとく死滅させましたが,
このときも同様の汚濁防止膜を用いています。
ある技術者から汚濁を防止できる仕組みは金をかければ可能だと聞いたことが
あります。が,行政がそれを受け入れないそうです。
現在の汚濁防止膜は過酷な自然界の中で用いるのは無理だと誰もが理解
できる構造ですが,通常は水中の中にあり,陸上に引き上げるときは膜を
丸めているのでその構造を見ることはありません。
設置しないよりはましなものですが,やってます式の形だけのものは
そろそろ止めにしてもらいたいものです。

5月19日現在の時点で,東江の小さな海は大きな変貌を遂げています。
ダンプカー5000台の砂の投入は終盤を迎えている様子です。
5月18日にブルドーザーで一気に砂を海に押し流したからです。
その様子を市民の会の一員である地もとの青年が私に連絡してきました。
(様子は市民の会ブログに掲載)
これでは生きものは逃げる時間もありません。
現場では,その青年が日々埋められていく小さな海の生きものたちの
からわらに付き添っています。愛するもののそばにいたいからです。
私が前回東江の海中に入ったのが5月13日です。
ブルドーザーで押し入れたのが18日,私が状況を確認したのが
翌19日です。
砂は一段と海を狭めていました。





おそらく300年ほど生きている塊状ハマサンゴの足下まで砂が来ている
ことでしょう。相変わらず海は白濁しています。





5月13日の水中での様子をお伝えします。
汚濁防止膜が台風のため撤去されていたので,白濁が外洋に拡散し,
現場は少しだけ透明度が回復していました。それでも2メートル先が
見えません。相変わらず生きものの死臭が漂い,海水も腐敗臭がします。
その臭気に誘われてカラスが集まっています。

波打ち際に稚魚の群れが見られました。
汚濁防止膜が外されたので外洋から入ってきたのかもしれません。



撮影は塊状ハマサンゴ(ハマサンゴおじい)のところから始めました。
おじいの頭の上はシルト状の粒子が堆積し,手であおぐと舞い上がります。



水中の画像は,ソフトで補正し見やすく処理しています。
実際は濁っています。

こんな中でサンゴや生きものが生きている(死滅しているものもある)のです。
塊状ハマサンゴはまだ生きていました。ポリプが開いています。



しかし,シルト状の粒子を払うために粘液を出して膜を作っています。
払っても払っても舞い降りてくる粒子ですから,そのうちにサンゴは
弱ってくるでしょう。



普通濃い桃色をしたハナヤサイサンゴはどれも白くなっています。
ポリプが死滅しているのかもしれません。



海中では砂は傾斜しながら生きものたちを埋めていきます。
そこで見ている目の前の生きものたちは,次ぎに入ったときには砂の
下です。それまで白濁の海で苦しみもがき,そして生き埋めとなる命たち
なのです。このようにして日本国中の海が埋め立てられてきたのです。



ソフトコーラルは砂に埋まりかけてボロボロです。



大きさ2メートルを越えるみごとなソフトコーラルも,やがて埋まります。



クマノミも元気にしていましたが,この次ぎ来たときにはイソギンチャクは
埋まっていることでしょう。せめてクマノミだけでも逃げてほしいと
思いますが,逃げても行く当てがありませんし,汚濁防止膜で外洋には
逃げられません。



ラッパモクという藻類の清らかな海も砂に埋まろうとしています。



海底にはビニール袋が散乱しています。
サンゴに絡み付いた釣り具やこのようなゴミとともに埋められるのです。
人間の醜い部分です。



私は,砂が投入される以前からGPSを用いてさまざまな生きものの位置を
記録してきました。この図にある半分以上の生きものが既に砂の下です。
これからも続く写真展には写真とともにこの記録を公開していくつもりです。



海に入っているとよく声を掛けられることがあります。
そのときにここで起きていることを事実のみ説明しています。
近所の人であったり名護市民だったりとまちまちですが,確実に
海を埋めるということがどういうことなのかを伝えることができている
と思います。



関連記事