先日,北中城村にある「中村家住宅」に行ってきました。
静かな住宅街の一角にそれはありました。
受付で入館料を払いパンフレットをいただきました。
それによると,「約280年前の代表的な沖縄の農家」と
書いてあります。
訪れた日は平日で人もまばらでゆっくり見学することができました。
入り口に立つと眼前にヒンプン(顔隠し塀)があり,屋根には
恐ろしげなシーサーが立ち入る者の邪念をにらんでいます。
入り口の地面は,立ち入りを拒むかのように傾斜しています。
何故でしょうか。前回訪れた「勝連城」も同じ造りだったまです。
入ってくる敵に対し,不利な体勢をとらせるためなのか。
それとも,坂を上ることで訪ねてきた来客に少しばかりの威厳を
感じさせるためか。それとも,出立するとき,下る心地が勢いよく元気に
なるようにとの心配りなのか。
その造りに何か意味があるはずだと,いろいろ考えてしまいました。
建物には極力手を加えておらず当時の様子を体感できます。
裏庭の小さなすいれん鉢に,こぼれんばかりの清水をたたえ,
風が治まると梢の緑の葉が水面に写って「凛」とした風情です。
しばらくこの縁側に座り,雰囲気を楽しみました。
心が洗われるようです。
それぞれの部屋には家具や調度品が置かれ,そのまま畳にごろんと
横になると,あたかもそこで暮らしているかのような錯覚にとらわれます。
建物の周りは小径が一周し道ばたには,彼岸花が咲いています。
急いで見れば10分とかからぬ大きさですが,時間の余裕があるならば
縁側にじっくりとたたずんで,当時のおもかげを楽しんでみるのも一考です。