2月26日に泡瀬の海中調査に同行しました。
この日は,気温26℃を超す真夏の様な晴天。
海上も,真夏の様相。
頭上には雲一つ無く,水平線には夏の積雲がもこもこと立ち上がっていました。
それにしても,強烈な日射しです。
調査海域から,ヘドロを満載した船が埋め立て地に向かっているのが見えます。
下の写真の右が第一期工事区域。左の写真がヘドロ運搬船。
今回の調査は,定期的に行う定点観測です。
調査ポイントは,第一期埋め立て工事区域から東へ約1.5キロメートルに
位置する「ヒメマツミドリイシ」のサンゴ群落です。
前回の調査は一ヶ月前。
このブログでも取り上げています。
http://ari3tsu.ti-da.net/e2374739.html
今回の調査結果を一言でいうなら,「急速にサンゴや貝が死んでいく状況にある。」
ということです。
僅か一ヶ月で,こんなに変わるものかと見てわかるほど状態が悪くなっている。
規定の調査を行わずとも,見てわかるのだから相当な勢いで海中の生物が
死滅し始めているということです。
また,海中の視界が非常に悪い。前回も悪かったが,今回はそれ以上です。
砂じんが舞っていて,視界は約3メートル。
前がよく見えません。
1メートル先の物体にカメラの焦点が合いにくいのです。撮影は苦労しました。
先端が死んだサンゴには,「シオミドロ」という藻類が付着しており,
完全に死滅したサンゴには,全く藻の付着がありません。
なんとか生き延びているサンゴには,天女の羽衣のような美しい「カゴメノリ」に
覆われていました。下の写真が「カゴメノリ」です。
死滅したサンゴの上を青いスズメダイの群れが泳いでいきます。
上記の画像は,透明度を上げるためにソフトで補正処理をしています。
画像の色が悪いのは,そのためです。
黄色い「シオミドロ」という藻類が付着した部分は死滅しかかっている部分です。
藻類が付着していないところが完全に死滅した部分です。
たまに,濁った前方から「デバスズメダイ」(沖縄の言葉でオービカー(青く光るの意味か?))の
群れが突然現れて,楽しませてくれます。
いたんだサンゴを見ていると彼らがかわいそうになります。
サンゴは,彼らにとっての生活の場です。家であり食堂であり,産卵の場でもあるのです。
枯れ果てたサンゴの上を泳ぐ彼らと視線が合うと,我々人間のしでかした大罪を「許さないぞ!」
「ここから立ち去れ!」と言っているように見えてきます。
海底は,「リュウキュウサルボウガイ」,「リュウキュウオウギガイ」,「ハボウキガイ」などの
貝の死骸が目立ちます。特に,「リュウキュウサルボウガイ」の死骸が目立ちます。
さらに,「シラヒゲウニ」も死にかけているところを見付けました。
トゲが抜け落ちています。
こんな海でも,魚たちは,この場所から移動できないのです。
私たちは,そこがいやなら,別の土地へ引っ越せばいいのですが,彼らには,それができません。
彼らは,この泡瀬で生まれ,泡瀬の海に生きて,小孫を残し,ここで死んでいくのです。。
生きものが減っていく中で,いくつかの生きものの写真を撮ることができました。
泡瀬には,「タツノオトシゴ」が生息しています。
「カゴメノリ」の林は,小さな魚たちの隠れ家です。
濁った海では,サンゴに十分な光が供給されません。
今日のような晴天でも海中は暗い状態です。
光が無いとサンゴは,光合成が出来ずに死んでしまうのです。
第一期工事区域は現在,司法の判決を無視して,埋め立てを始めてしまいましたが,
この埋め立ては,近くの新港地区の航路浚渫(大型船が港に入港できるように航路の
海底を深く掘り下げる工事)で出た大量の海底土砂(ヘドロ)を捨てるためのものなのです。
サンゴの海をそれだけの理由で埋めてしまうというのが私にはとうてい理解しがたいのです。
おそらく正常な人なら私と同意見でしょう。
海の濁りの原因は,航路浚渫工事及び埋め立て現場から発生した汚れが潮流に乗って
周囲に拡散しているのでしょう。
実は,私が時々潜る知念の海も視界が悪く,最近いつ潜っても砂じんが舞っている
んです。時化てもいない穏やかな時も同じです。視界は約5メートル。僅か5メートル
下の海底が見えない。これは何故なんでしょう。
断定できませんが,12キロメートルしか離れていない泡瀬から潮流に乗って
漂ってきていることは考えられることです。
この先,埋め立て工事が続けば,数年先にはほとんど死滅した海となるかもしれません。
サンゴ礁があって,はじめて魚やイカ,タコ,貝などが生息しているのですから
サンゴが死滅すれば,これらの生きものが一緒に死滅し水産資源が枯渇するのは
あたりまえのことです。
今現在生きている私たちの世代が,沖縄の海を破壊し続けている。
将来の子どもたちは,私たちが楽しんできた沖縄の海を味わうことが出来ないかもしれない。
埋め立てには賛否両論がありますが,この先数十年後の人々の立場は考慮されていない。
沖縄の海の美しさを次世代も享受する権利があると思うのですが…。
この埋め立て事業は,国,県,市などの行政が実行していますが,
常に判断しているのは,一人一人の人間なのです。
政治家をはじめ,立案,実行を行っている行政の職員,
新聞でしかしか知ることができない市民であっても,埋め立てが,正しいことか誤っていることかを
考えて判断する責任が一人一人にあると思います。他人事ではないと思うのです。
これから,浦添市でもバイパスを造るために自然の残る貴重な海岸が
埋め立てられます。
(2009年9月現在,工事進行中。)
また,那覇空港拡張工事も沖合を埋め立てる予定です。
いったい,何処まで貴重な美しい海を埋め立てるのでしょうか。
きれいな海のイメージが沖縄です。それにひかれて内地から観光にやってくる。
埋め立て地ばかりになった沖縄の魅力は半減するのではないでしょうか。
美しい海は,外国に行けば沢山あります。旅行費も安くなりました。
同じ程度の旅費ならば海外に行こうと思うことでしょう。
それでほんとうにいいのでしょうか。