泡瀬埋め立て再開

有光智彦

2010年08月08日 12:26

 泡瀬干潟埋め立て再開の新聞記事に驚いてから数日経ちました。
 東門沖縄市長は,できあがった土地利用計画を国に提出しました。
 このいきさつは,私のブログのおきにいりにリンクしている
「泡瀬干潟を守る連絡会」のブログに詳細に渡る情報が掲載されていますので,
そちらをご覧ください。

 沖縄市の埋め立て後の土地利用計画は,司法の場で2度も経済的合理性が
無いとして公金刺し止めの判決を受けています。
 再度練り直し,今回できあがったのですが,新聞の計画図を見ると,
大して変わっていないように思われます。
 市民への説明が全くないまま国に提出された計画はほんとうに大丈夫
なのでしょうか。



 この計画書の提出の経緯は,フェアではありません。
 司法判決とは何なのでしょう,市や国は司法判決をどのように考えているので
しょうか。県民として市や国が信用できません。

 今年10月に名古屋で生物多様性の国際会議があります。
 同じく,私のブログのリンク先にホームページがありますのでご覧ください。
 議長国は日本です。生物多様性を守ることを主眼に進める会議の
まとめ役が日本なのですが,一方で貴重な海を埋め立てるのです。
 また,国は海草藻場の保全を提唱しているのです。
 意味不明の国政です。
 前回の国際会議で次回の開催国を決める時,手を挙げた日本に対し,
日本以外ならどこでもいいという意見もあったそうです。
 現在の日本に議長国の資格はありません。
 本気で生物多様性を考えるつもりが無いのなら条約を破棄し,日本は
自然を守らないと世界にその意志を示すべきです。
 その方がよほどいい。

 泡瀬干潟と海中を見ているものとして,これ以上の開発はナンセンスです。
 他県の人々が求めているのは大きな自然です。
 青い海や山,その自然を求めてやって来ます。
 しかし,ここに住み自然へのインパクトを知る者は,いかに沖縄の自然保護が
守られていないかを知っています。
 開発は,これからも続きます。次は空港拡張で大嶺海岸が対象です。
 この島は近い将来コンクリートの島になるかもしれません。

 このところ移植サンゴの事業を後押しする企業が増えています。
 でも,埋め立てを止め,赤土汚染,生活排水などの問題に徹底的に
取り組み,根本的に海を守らなくては,いくらサンゴを植えても意味が
ありません。サンゴ移植事業をすれば海が復活するというのは
幻想ではないでしょうか。免罪符になっていないでしょうか。

 泡瀬の話しに戻りますが,現在は埋め立てが中断していて,巨大な人工の護岸が
干潟の上に構築されています。囲まれた海の中は潮の入れ替わりが無いため,
残されたサンゴや生きものはどうしているでしょうか。
 この囲いの現状の公開を市民は要請していますが,沖縄市は公開していません。
 囲いの中には泡瀬でも最高のサンゴ礁が広がっていたのです。
 その中のサンゴの一部を沖縄市が業者を使い,移植しました。
 私は,何度も移植されたサンゴのその後を見ています。

 移植した環境と方法は,よくありません。
 移植は海底に敷いた鉄筋の格子またはブロックで囲った花壇のようなところに
植え付けられていますが,海底は泥状なので,大潮の干潮時は波により
泥が舞い上がり,周囲の海中は1メートル先が見えないほど濁ることが
ありました。光を最も必要とするサンゴの移植場所としては最悪です。
 下の画像はサンゴの状態がわかるように画像処理を施して透明度を上げています,
実際の水中は水深がたったの3メートルなのに海底が見えないぐらい濁っています。
 サンゴがあちこちで死んでいます。これが実際です。



 また,防波堤沿いのテトラポットにも水中ボンドで固定されています。
 こちらも手であおぐと泥が舞い上がります。
 それに,テトラの上でどんどん成長したらいったいどうするのでしょうか。
 いづれにしても移植をして埋め立て区域からサンゴを救出した事実を市民への
口実としたかったのでしょう。
 本気で取り組んではいない実態から沖縄市の市政を信頼できません。
 この画像も画像処理により鮮明にみえるようにしてありますが実際はかなり
濁っています。



 埋め立ては干潟全体の2%で周囲の環境に与える影響は少ないとしていますが,
これも誤りです。何年も泡瀬干潟をモニターしてきた写真家の小橋川氏の
写真を見れば一目瞭然です。だれも異議を唱えられないでしょう。
 海草藻場の消失や砂州の位置の変化など人工護岸が出来ただけで潮の流れが
大きく変わり,周囲の生態系を変えてしまうのです。
 一部をいじくり回したら,全体が狂い始めるのです。

 仮に人工島が建設されて都市が建築されるとしましょう,
そうすると,生活排水の問題が出て来ます,どうするのでしょうか。
 下水処理場は完全に水を浄化できるものではないようです。
 雨が降ると道路に溜まっている車の化学物質や汚れ,洗剤などが濁流となって
海へ流れ込みます,このような水は下水処理場へは行きません,
 海へ直入なのです。これで,周囲の海へ与える影響は少ないとどうして
言えるのでしょう。問題は,建設中だけではなく,できあがったその後の影響が
多大なのです。考えれば,たくさんのインパクトが予想できるはずです。

 泡瀬のサンゴ礁は何千年もの間営みを続けてきて,無数の生きものの命を
育んできたのです,その営みを人間の目的のために,たった数年で破壊して
しまいました。もう元には戻りません。
 泡瀬の海は沖縄市や日本国の都合でどうでもできるという考え方は時代遅れです,
今や残された自然は貴重です,地球の財産としての視点が必要だと思います。
 生きもの生命の上に土を盛り,コンクリートで固め,人工物を建てること。
 私は,そんな土地を使いたくない。

 地球温暖化について考えると,その兆候が始まっていることを,もう誰もが
気づいていることでしょう。干ばつ,洪水,連日の高温,二酸化炭素を吸収する
サンゴや海草藻場を埋め立てる発想は,地球温暖化の脅威を自覚していないとしか
思えません。


関連記事