白保の今

有光智彦

2008年12月16日 19:12

12月8日から12日まで石垣島と宮古の伊良部島へ行ってきました。
目的は,石垣の白保の海では,空港建設に伴う影響をこの目で見たかったこと。
伊良部島では,2年前に訪ねたところを,今の自分の目で
どういう風に写るのか確かめるためでした。
私の場合,毎日潜っている大度海岸が指標になります。
大度と比べどうなのか,魚の種類やサンゴの現状はどうなのかなど
知りたいことが沢山あります。

石垣島の空港から比較的近い海岸沿いにある町が「白保」です。
椎名誠の映画「うみ,そら,さんごの言い伝え」で舞台となった
ところです。白保は,30年ぐらい前から新空港建設にあたり
賛成と反対派に分かれ町が騒然となったところです。
現在は,カラ岳の近くの陸上に空港を建設中です。

白保の海は,海の写真家,中村征夫の「SHIRAHO」でも
その美しい姿がとりあげられています。写真集に登場する
浅い海には「アオサンゴ」や「ハマサンゴ」が点在し,
生き生きとしていて,透明度は抜群です。
私も,一度は行ってみたい海でした。

白保のアオサンゴ群落は,岸から1000メートル沖のイノー内に
あるため岸から泳いでいくことは出来ません。
シュノーケルツアーか船をチャーターするしかありません。
私は,観光が目的ではないので,人の紹介で小舟をチャーターしました。

舟の船長は,新里さん。舟は白保の集落から北に上がったところの浜に
ありました。天気は良好。潮は満潮ですが,水深は3メートルぐらいで
しょうとのこと。



新里さんの他,たくましいウミンチュも同行します。
舟は元漁船を改造したもので,大きくてかっこいい船形です。
私は,ウエットスーツを着装し機材を持って上艇しました。



舟は,私の希望通り空港建設現場の沖へ向かいます。
大きなイノーです。海岸からリーフまで1000メートルあります。
水の色はマリンブルー。浅い海です。



新里さんは,イノー内のサンゴを
縫うように舵を取ります。この海を知り尽くしている人と聞いています。
安心感があります。



舟は30分近く走り,空港建設の現場をやや通り越し停船しました。
まず,ここから見てくださいとのこと。
海の色は先ほどの透き通るようなマリンブルーから,ややくすんだ色に
代わっています。
海中は透明度が悪いものの,しかし,細かい枝サンゴの林が広がっていました。
下の写真がその状況です。



これから数時間,ここより白保の集落に向かいながら,それぞれの
ポイントの海を見分します。
シュノーケリングで白保の集落の方向へ進みます。舟も伴走します。
まもなく,枝サンゴの林は無くなり,一転して死滅したサンゴの海底となりました。
透明度も悪く,アマモとハマサンゴがかろうじて生きていました。
魚の姿もまばらです。
ここは,轟川の赤水を何年も受けてきたところです。
おそらくその影響なのでしょう。下の写真がそうです。



そんな海でも,フグの姿を見かけました。コクテンフグでしょうか。
また,死んだハマサンゴの上には,ファーマーズフィッシュという自ら
藻類を育てる魚(クロスズメダイ)などが広範囲にわたり居着いて
いました。下の写真を参照。



ちょうどここの陸側に空港が建設されています。
空港建設現場(左下の写真)の右方には,カラ岳(右下の写真)があります。



空港建設による影響は,赤水の発生をこの目で確かめていないので
コメントはできません。

1時間近くも泳いだでしょうか。
死滅した海域は続いています。もういいと思い,舟をサンゴの残る海域へ
まわしてもらうことにしました。空港建設現場沖から更に南下します。
陸岸からリーフまで,やや狭く,約500メートルというところでしょうか。
残念なことに正確な海域の地図が無く,私の潜ったポイントを特定することは
できません。しかし,白保の海は,そう広くはないのです。
その狭い海域の中で,サンゴの死滅しているところと,生き生きとしている
ところがあるというのが私の印象です。

いろいろな方からの情報で,この轟川(とどろきがわ)
という車の道幅ぐらいしかない小さな川から土地改良事業などから出た
赤い水が白保の海へ流入したということです。
海へ入った赤い水は,川の南側にあるワタンジ(干潮時に歩いてわたれるところ)
で遮られ,アオサンゴのある南側の海域へは,流入しなかったと言っていました。
赤い水は,河口から北側のイノー内に広がったとのこと。
だから,河口から北の海底は死滅しているのだろうか。

舟は,轟川の河口を過ぎてリーフ近くのポイントに着いた。



ここは,クマノミの城があるから見ておいでという。
そこは,先ほどまで見てきた死滅した海底とは,全く違う豊かな
サンゴが育っていた。ただ,外海が時化ていたため,砂塵が舞ったように
透明度は,あまりよくない状態でした。
下の写真がこのポイントの状況です。





次に,待望のアオサンゴの群落に連れて行ってもらいました。
だいぶん,日が傾いています。
私は,写真集にあるような海を想像していましたが,残念なことに
3年前の台風でアオサンゴの群落は,外海からの砂の流入で
半分埋まったような状態であると聞きました。
確かに,海底は凹凸があり,イメージが違っていました。
とても残念でなりません。
下の写真は,アオサンゴの群落の写真です。



もう一カ所,比較的,サンゴが生き生きしているところを案内してもらいました。
そこは,ユビエダハサンゴの群落でした。
黄緑色のサンゴは,まるでピースをしているようです。
海は,やはり,時化のため濁ってはいましたが,サンゴは生き生きしていました。





日没近くになって舟を港に戻してもらいました。
今回は,外海が時化ていたから透明度が悪かったのかもしれません。
次回,行くときはどんな海になっているのか,もっとよく知りたいと思います。


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