大嶺海岸Ⅲ

有光智彦

2014年12月21日 17:46

現在、那覇空港に隣接する大嶺海岸では、那覇空港第二滑走路の建設事業が行われています。
この事業は、自然の海岸と海を大規模に埋め立てて建設する公共工事です。
実際の工事は、今年2014年1月から開始されました。
工事は沖合で行われており、海岸からはどのような工事をしているのかわかりません。

県外の方々が飛行機で那覇空港に下りられる際、着陸の寸前、眼下に見下ろす海が
大嶺海岸です。干潮時には広大に干出する海のあちこちで大型の作業船が工事をし、
海の中に構築した石の護岸を見ることができるはずです。

   ※航空写真の出典はグーグルアースより

公共工事は、どのような海で行われているのかをお伝えします。
掲載した写真は、2014年の5月中旬に撮影したものです。

大嶺海岸は広大で全体を早足で見て歩いてもまる一日かかります。
大潮の干潮の日、沖合のリーフまで歩くには、健脚の人でも1時間半を要します。
埋め立てが行われている海域は海草藻場が広がり、さまざまな生きものが棲んでいます。

写真は干潮で干出した海草です。


海草藻場に点在する潮溜まりの中です。澄んでいます。


工事の様子です。全面に広がっているのは海草です。


海草藻場には砂を浄化してくれるナマコ、初夏の海は魚のおちびさんたちで賑やかです。
  

おちびさんたちです。一緒にいる2匹は仲良しさんでしょうか。
   

沖に広がるリーフ付近のイノーの様子です。
その日の潮汐から滞在できる時間を計算して行動しますが、満潮は岸寄りと中間付近
から始まり、そのことを忘れていると退路が絶たれてしまいますので、沖合での撮影は
落ち着きません。そのような海だからこそ今まで自然が色濃く残っていたとも言えそうです。
水中は非常に透明度が良く、生物多様性がとても豊かです。
  

海底の砂粒を拡大して見てみると、白色のはサンゴのかけらや有孔虫の仲間、茶色は
ウニの棘、青色のはアオサンゴ(普通のサンゴの骨格は白ですが、アオサンゴは青色)のかけら
でしょうか。すべてこの海で生息していた生きものたちの痕跡です。


貝類や魚たちの営みを見ていると飽きません。つい時間を忘れそうです。
   
 
シマギンポの子どもがごはんを食べていました。
 
 
岩礁の上ではヤドカリが集まって殻干しをしていました。


タカラガイの仲間が移動中です。


埋め立て工事は着々と進んでいます。私たちはまた一つ、海を失いつつあります。
公共工事のあり方や、自然や生きものと人間社会の関係、もっと大きな視点では、
地球の中での生きものと人間の関係など、考えるきっかけとなればと思います。
 

〈参考資料〉
琉球新報2014年1月21日のニュース
那覇空港第2滑走路増設 “市最後の海岸”生態系影響も懸念
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-218145-storytopic-5.html

那覇空港プロジェクト
http://www.dc.ogb.go.jp/Kyoku2/information/nahakuukou/index.htm

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