2009年09月09日

護岸工事

沖縄本島の西海岸に北谷町(ちゃたんちょう)があります。
ここは,沖縄戦の時,初めて米軍が上陸した場所だと聞きました。
現在は,海岸付近にたくさんのマンションやダイビングショップが立ち並んでいます。
ここが,浅い海を埋め立てた土地とは思えないぐらいその事実は風化しています。
海岸は,ほぼ全域がコンクリートの護岸で覆われています。
夕方には,夕陽の名所として人々が集まってきます。
古くてもペンキでデザインされた護岸の上に座り,海の彼方に沈む落陽を心ゆくまで
眺めるのです。

その一角に私たちが「稚魚の浜」と呼び続けてきた浜がありました。
既に過去形で表現しなければならないのがつらいことです。

稚魚の浜は,コンクリートの護岸の片隅に自然の砂(サンゴのかけら,貝殻)が堆積
して出来た小さな浜でした。

夕方には子どもを連れたファミリーや子どもたちの遊び場となっていて人々にとっても
憩いの場となっていました。

しかし,その場所が人間のためだけのオアシスではなく,たくさんの稚魚たち
の生育の場としての重要な海域として知っていました。
稚魚たちにとってはなくてはならない場所だったのです。
周辺の海域に同様な浜は存在しません。唯一の浜でした。
浜は沖合に向かって,らなだらかな傾斜となっていました。
浅い水中は,死んだサンゴのかけらがたくさん堆積していました。
護岸工事護岸工事

私たちはこの場所でたくさんの稚魚たちと出逢い,観察をし,写真を撮りました。
トラフコーイカ(コブシメの仲間)の産卵と卵の成長,そして誕生,成長。
アオリイカの子ども達の観察。群れを成すキンメモドキの稚魚たち。
ヘコアユやカマスの稚魚たち……。
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この浜に立ち入り禁止の柵が設けられた日,ここが護岸工事の対象になっていることを
知りました。
急きょ私たちの思いをしたためた文書と写真を携えて北谷町の役場に
嘆願に行きました。
私たちは,浜を工事区域から外してほしいこと。
もし不可能なら,できるだけ浜の原型をとどめ、工事で受ける負担を
減らしてほしい旨を担当の方に伝えました。
担当の方は真摯に私たちの話を聴いてくださいました。
しかし,工事の計画は決まっているのでおそらく変更は出来ないでしょう
との回答でした。
護岸工事護岸工事

それから約2ヶ月後の昨日,とうとう工事が始まりました。
瞬く間にコンクリートの塊が浜に敷き詰められていきます。
護岸工事

相棒は,フェンス越しに失われていく「稚魚の浜」を見つめていました。
今まで稚魚たちとの出逢いの場であった大切な心の場所が跡形も無く
消し去られようとしていました。
そして,なによりも生育の場を奪い去られた稚魚たちの今後。
どこで成長していったらいいのでしょうか。
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そのことを考えると,人間は自然を大切にしなければならないと誰もが
考えますが、実際はなかなか難しいのが現状です。
護岸工事

自然は、一度破壊すると元には戻りません。
護岸工事は必要としても、できるだけ海に負荷をかけないように
考える視点が必要だと感じました。
護岸工事

新しい護岸は自然災害から町を守るためだと聴きました。
海にはコンクリートの塊を敷き詰め,そびえ立つコンクリートの障壁です。
人と海を隔てる人工物のように見えます。

「親水性」という概念がこれからの護岸づくりの基本方針となるといいます。
しかし、人工の浜で本当に心が癒せるのでしょうか。

沖縄の海岸は,どこに行ってもコンクリートの護岸で固められています。
空から見れば一目瞭然です。
そんな海に魅力を感じる人はいないでしょう。
本土の私の友人もそんな沖縄の現状に問題があると言います。

人間の心の豊かさは、周りにある自然の豊かさと関係しているように思います。
護岸工事



Posted by 有光智彦 at 18:17 │海への負荷 護岸工事
この記事へのコメント
今日はお疲れさまです 自分なりの良い写真はとれましたか?
Posted by ガク at 2009年09月10日 22:01
ガク 様

こんばんは。
コメントありがとうございます。
今日は,那覇に行く用事がありましたので,短時間ですが,
浦添の西洲の海に入りました。
アマモ(海草)が潮で左右にそよぎ,斜めに射し込む太陽の光線を受けて
その緑のシルエットがとっても美しく感じました。
写真は,そのアマモぐらいでしょうか。
その代わり,海に遊びに来ていた男女の若者たちと会話をして
楽しみました。海は,お互いの心の壁がなくなって素直に話せる
ところがいいですね。
Posted by 有光智彦有光智彦 at 2009年09月11日 02:30
こちらこそ よろしくお願いします。

写真展、感動です
小さな生命の物語が目の前に見えてきました。

大度海岸には、きのう行って来ました
沈む手袋や砲弾に出会ってきました
西洲の砲弾と違って 処理の後が無かったのでドキドキしました。
また海で、おあいしたいです

ブログは、時々しか更新してないので 申し訳ないです
また、ゆっくり学びに来ます。


お気に入り、にリンクしても良いですか。
Posted by や~る~ at 2009年09月13日 18:56
や~る~様

こんばんは。
コメントありがとうございます。
私も大度で機関砲の弾らしきものや薬莢などを見つけています。
手に取ってみると生々しい戦争の証拠に,ここが激戦地であったことを
実感します。

今日も暑い一日でした。
海は台風の影響なのか時化ていました。

リンクはどうぞ。こちらこそリンクをさせて頂いてよろしいでしょうか。
また大度でお会いしましょう。
おやすみなさい。
Posted by 有光智彦 at 2009年09月14日 01:29
おじゃましています

台風、お昼に知りました 此方にきそうですね。

少し お聞きしたいのですが
大度海岸のサンゴの中に白化現象ぽく?
白く成ってる者を、見たのですが浅瀬でも白化現象は起こりますか。

リンク、して貰えるなら嬉しいです。
よろしくお願いします。
Posted by や~る~ at 2009年09月14日 21:44
や~る~ 様

コメントありがとうございます。
リンクを確立しました。
こちらこそありがとうございます。

お尋ねの件ですが,イノーの中のいくつかの小さなサンゴに褐虫藻が抜けたような現象を認めています。
原因は私にもよくわかりません。
それでも,一年前に比較するとイノーの中のサンゴは育ってきていて
全体的には良好な状態だと思っています。
反面,人為的な負荷の要素が多く,そちらが問題だと思います。
すばらしいサンゴの海の保全対策が必要です。
Posted by 有光智彦 at 2009年09月17日 22:39
おはようございます。

返答、ありがとうございます。
人為的 傷は、見ていて 痛々しいです
私も自然と触れあう際の行動に注意したいです。
Posted by や~る~ at 2009年09月18日 07:35
や~る~ 様

こんばんは。
今日は北谷に行って来ました。
イカの季節が始まったのか,サンゴやソフトコーラルに
イカエギがたくさん刺さっていました。

アオリイカの産卵を見ました。
一所懸命に子孫を残そうとする行為は見ていて
無条件で感動します。

その直ぐ側でイカエギを使った釣りをしている人がいました。
海と海の生きものたちの営みを見ている私には,鋭い針が2段に付いたイカエギでイカをだましてつり上げる方法が卑怯なやり方に見えてきてなりません。
海の生きものがこうむる人間の被害がどんなものなのかを伝える
写真も集まってきました。
いずれ公開してみんなに知ってもらおうと考えています。
知らせることと知ることが大事だと思います。
Posted by 有光智彦 at 2009年09月21日 01:39
砂辺の浄水場前の工事がだいぶ進み、昔あった小さな砂浜は完全になくなりました。悲しい限りです。
埋め立ての影響が心配ですね。
Posted by rentogen at 2009年10月01日 14:34
rentogen 様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

そうですね。
今日も,工事は続いていました。
あの小さな浜は,いろいろな人のそれぞれの
オアシスだったと思います。
とても残念でなりません。
サンゴ礫の堆積した浜は,水の透明度を
引き立てるように輝いていました。
それを見るのか゛とても楽しみでした。
そのような浜に戻ってくれるのが
私の願いです。

お仕事,ご苦労様です。
Posted by 有光智彦 at 2009年10月02日 01:14