やどかりさん②

有光智彦

2007年11月30日 01:16

 今夜は,ヤドカリの空き屋騒動をお話します。笑。

  季節は11月の下旬です。午前7時頃,朝日が登ってきます。

 私は,午前5時過ぎに目が覚めたので,民宿を出て街灯の無い真っ暗な道を
渡口の浜と平行に1㎞ばかり歩きました。海岸に出る小径をみつけたので浜に
下りました。その頃には東の空の低い雲がうっすらと紅色に染まっていました。
 夜明けは,日没とは少し違う心のときめきを感じます。
 どこか心は水平線の彼方まで,すーと広がっていくような躍動感を感じます。
 少しずつ明るくなり始めた浜のシルエットは,なめらかな弧を遠くまで描いて
いました。今では,波消しブロックや護岸の存在しない海岸はとてもめずらし
くなったと思います。
 海岸の地形は,渚からゆるやかに傾斜し,護岸工事がされていない林へと
続いています。

 海岸と林を行き来する「オカヤドカリ」にとっては,とても住み
ごこちの良い環境にあるのです。これが,本来のあるべき姿だろうと思います。
 夜明けの光は,東方の一点から広がりはじめ,うろこ雲を桃色に染めながら
空の頂点へ向かってどんどん進んでいきます。
 やがて,まばゆい白色光を放ちながら太陽が岬の上にぽっかりと顔を出します。
 見上げると頭上の空はとっても深い青色となり,子どもの頃の純粋で透けるような
素直な心に戻っている私を確認します。

 「オカヤドカリ」は海の中のヤドカリと違って,生活の場は主に海岸と海辺の
林の中のようです。彼らが,24時間どういう生活をしているか私はまだ知り
ません。今後の課題です。

 浜が完全に明るくなった頃,真っ白でパウダーのような砂の上で何かが
ごそごそと動いています。慎重に接近していくとオカヤドカリが,今朝ほど渚に
打ち上がった一つの貝殻を我が手中にするべく奪い合っているところでした。
 しばらく,腰をおろし観察することにしました。わくわく。
 集まっているオカヤドカリは大小さまざまですが中に一匹だけ大きいのがいます。
打ち上がった空き屋は,どう見ても一番大きなヤドカリに手頃な大きさなのですが
小さいのも,中ぐらいのも,みんな一所懸命に力の限り奮闘しています。
 一番大きいのは,小さいのに阻止されてなかなか空き屋にたどり着けません。

 そのうち乱闘に発展!。もうみんな砂まみれでどうにでもなれという感じです。
 全員から「こうなったらやるっきゃない!」という意気込みを感じます。笑。
 どさくさに紛れ,やっと一番大きなヤドカリさんが空き屋にたどりつきました。
 早速,寸法と奥行きを確認しているようです。気に入ったのでしょうか?。
 乱闘はこの後も続きましたが,彼らが私に気付いたとたん,みんなびっくり
仰天して,四方八方に逃げてしまいました。残念。
……というショートストーリーだったのですが,写真を見てわかりましたか。笑。
 写真は,1段目左端から右方向へ,続きは2段目左から右へ,更に続きは
3段目の左から右へ進んでいきます。最後のコマが右端です。
 全部続き写真で12コマあります。楽しんでいただけました
でしょうか。

  

関連記事