魚の診療所

有光智彦

2009年01月18日 00:05

今日の海は,土曜日ですが,ほとんど人がいませんでした。
満潮は11時23分。ちょうど今が満潮のピークです。
風は沖合から陸に向けて吹いており,白波も昨日よりも激しくなっているようです。
いつもの場所に荷物を置いてからイノーへ入ります。
今日は,とても冷たく感じましたが,それでも水温は21℃ありました。
満潮のイノーは外洋からの波がちゃぷんちゃぷんと入ってきています。

一番深いところまでやって来ました。
水深は3メートルほど。透明度は非常に良く遠くまで見渡せます。



しばらく何度も,海底に潜行し,水面を下から仰ぎます。
青空と太陽がキラキラと輝いています。
その様子を見て,やや大きめの「オグロトラギス」がやって来ました。
とても好奇心の強い魚ですが,危険を察知すると直ぐに逃げてしまう魚です。
最近,私も巧妙になり,撮影のテクニックも上達しました。
まず,あなたに感心は無いよと見せかけ,少し離れたところから潜行し海底に沿って
進み,彼の近くの岩陰に隠れて,そろりとカメラを向けるというやり方です。
これには,トラギス君も不意打ちを食わされたと見えて彼がこちらに気が付いた時には
既に写真に納めていました。下の写真がそれです。笑。
もう一枚撮ろうとしたら逃げられてしまいました。



その後,やや浅瀬で「ホンソメワケベラ」の診療所を観察しました。
ここは,魚の間では評判の診療所です。
医師は一人,いや一匹,小柄なホンソメワケベラです。
サンゴの陰に隠れて観察します。
そして,患者の魚くんを撮影します。これは,盗撮でしょうか?
マナー違反ですね。クスクス。
診療所は,ハマサンゴの下にあります。



まず,最初にやって来たのは,なんと同種の「ホンソメワケベラ」です。
あれあれこれでは,医師が医師を治療しているようなものです。
大きめのホンソメワケベラが患者の方です。
頭を水面の方へ向け,ヒレを大きく開き,口を開けています。
これが,「お願いします!」の魚共通のポーズです。
とっても気持ちよさそうです。



こちらには気づいていないようです。
人間の気配がしない本当の彼らの日常生活の現場に居るのです。
続いてやって来たのは,「おじさん」です。
おじさんという名前の由来は口の下にある長いヒゲです。
実は,ただのヒゲではなく,味蕾(みらい)という感覚器官です。
これを海底の砂に突き刺しながらゴカイなどの獲物を探すのです。
おじさんも,「お願いします!」のポーズをとっています。



そうすると,ホンソメワケベラが近づいて来て皮膚に寄生した虫などを食べて
クリーニングを始めます。
おじさんは,気持ちよさそうです。なかなかもういいですとは言いません。
さっきまで,普通の体色だった白色が,みるみるうちに真っ赤かになってしまいました。
よっぽど気持ちいいのでしょうか!



しばらくすると,次のお客さまが来ました。
今日は,とても忙しいようです。
おじさんをほったらかしにして別の魚の方に行ってしまいました。
おじさんは,どこに行くの?こっちに来てよ!とポーズをとります。



が,断られたようで,あきらめて帰って行きました。
この後,チョウチョウウオさんをクリーニングしていました。




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