アーサの海

有光智彦

2009年01月31日 03:07

今朝から夏のような日和。
カブ号で海へ行くことにしました。
家の窓は開けっ放しにしたいところですが,
晴れていても急に雨の降り出す沖縄では,閉めていく方がいい。
空は,よく晴れています。気温24℃。



海は,外洋側はうねっていて白波が立っています。
今日もイノーの中だけの撮影です。
干潮で少しづつ干出した後方礁原(海岸に接した干出部分)は
アーサが少しだけ芽吹いていました。



だけど,黄緑色の綿のような海藻が全面を覆い,アーサが下敷きと
なっていました。人に聞くと,この現象は2年前ぐらいからだそうです。
今年は不作かもしれません。地下ダム設備からイノーに流入する
赤水でイノーが汚れて来ています。
その影響が出始めたのかもしれません。
別の生きものでは,猛毒の「ハナブサイソギンチャク」の数が
増えてきています。この生きものは,汚れた海で良く見ます。
環境悪化の証人です。夏の海水浴シーズンでこれに刺される
人がいなければいいのですが,子供が刺されたら非常に危険です。
警告の掲示をしなければなりません。

イノーの海水温度は23℃で一週間前の21℃から上昇しています。
2月は水温が一番低いと言いますので,また下がるのかもしれません。

外洋に出たくても時化ているのでカメラをしっかりホールド出来ないので
波の静かなイノーに限られます。でも,詳細に観察すると不思議な
生きものがたくさんいます。

まずは,見たことのない変な生きものを紹介します。
体長3ミリ,幅2ミリ弱。赤と白のツートンカラー,目と足があり海のダンゴムシ風。
背中に突起があり,宇宙船の様です。海水中を泳ぐのは下手でどうやら海底を
這うタイプのようです。刺激するとピョンピョンと跳ねるように移動します。
肉眼ではよく解りませんが,画像で見るととてもかわいい生きものでした。
ピンセットの先っぽに静かに乗ってもらいました。





イノーは小さな生物を多く見かけます。
ハマサンゴの周辺を覗くと小さな半透明の魚を見ることができます。
敏捷で脅かすとすぐ隠れてしまいますので,慎重に接近して観察します。
これも肉眼ではわかりにくいのですが,写真に撮りパソコンで拡大して
見ると,なかなかのデザインであることがわかり感動します。



天気のいい日は魚たちも活発に行動します。
特に明るい日射しを受けていきいきと成長している海藻の草原では
「イシガキカエルウオ」や「ギンポ」の仲間が,海藻を口でこそぎ取って
食事をしています。



明るいイノーの中は暖かです。
小さなサンゴのあかちゃんもすくすく育っています。



サンゴの隙間から小さなウツボが控えめに顔を出していました。



イノーから自然の水道の方へ近づきます。
既に満ち潮の兆しがあるのか外洋の海水がイノーに流れ込み始めて
います。
時々水流が渦を巻くその下でなにやら砂に隠れた生きものがいます。
「ぎょ!」としました。出ました巨大オコゼです。



口がへの字で完全に上を向いています。
こんなのを足で踏み抜いたら,猛毒の針が突き刺さり大変です。
激痛だと言います。毒は強烈で,入院して数ヶ月の通院となるようです。
非常に危険な生きものの一つです。靴など突き通す太い針が背びれに
隠されています。そして絶対に動きません。



見るからに不気味です。体長30センチはあります。
本体を確認するため,ごめんなさいと言いながら砂を仰いで払ってみます。



見てもう一度びっくり,「でかい!」そして醜い形相です。
「ダルマオコゼ」でしょうか。それにしてもこんなタイプは初めて見ます。
いつも見るのは,もう少し魚の形をしたかわいげのあるタイプです。
目が鈍い赤色で気味が悪い。目がどこにあるかわかりますか。



しばらく観察することにしました。
その様子を見て近づいてきた「オグロトラギス」と「ダンダラトラギス」も
見物に加わりました。





どうやら移動し始めました。泳ぐのではなく,海底をのっそのっそと
這って行きます。これまた不気味です。
そして,砂の堆積している場所で止まり再び砂の中に沈んでいきます。
上手にゆっくりと砂の中に隠れていきます。あの巨体が砂の中に
沈んでいくのも不思議です。そして再びデスマスクのように海底に
不気味な顔をさらすのです。



どうやって獲物を捕るのか見てみたいところです。あれでかなり敏捷なのかも
しれません。



「トラギス」たちが近づいて観察しています。見ていてこちらがハラハラします。
一通り見終わると,今度は私です。眼前に近づいて来る「オグロトラギス」くんを
何枚も撮らせてもらいました。
時々,姿勢を低くし警戒の姿勢を取りますが,この仕草がたまらなくおかしい
のです。思わず笑ってしまいます。



頭上でパチパチ音がします。そういえば海底もいつの間にか暗くなっていました。
雨です。激しく降ってきました。



カブ号の上には衣類を載せています。
急いで陸に上がります。16時です。もう今日は終了。
4時間ほど入っていました。

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