海面近くで出逢った生きものたち

有光智彦

2009年02月15日 02:03

今朝は,マーヤー(猫)の喧嘩で目が覚めました。
小さかったうなり声が段々とエスカレートします。
どこでやっているのかと思い窓の外を覗くとなんと目の前の倉庫の上でした。
早速,決定的一瞬の写真を撮るためにカメラをスタンバイします。
まもなく追いつめられた黒猫が猛攻撃に出ました。
うなり声はマックスとなり,攻撃の一瞬にシャッターを一回切りました。
後で見てみると,黒猫の猫パンチが,まさに振り下ろされ,ボス猫の頭に
直撃する直前のシーンでした。
この後,両者は互角と判断したのか数分間腰を下ろし落ち着いた後
ボス猫が去っていきました。



2日間,南の風が吹き続けました。
気温も25℃ぐらいあり,真夏のような気候でした。
現在の気温は21℃,雨が降り蒸し暑さを感じます。
ここ数日間,砂辺での釣り糸の回収や残波岬周辺の生きものを
観察に行ったりしました。
今夜は,その期間中,海で出逢った微生物についてお話します。



南風に押されて沖合から流され,砂辺の沿岸にはおびただしい
微生物の大群が押し寄せていました。
「海のお米」と呼ばれる「カイアシ類」や「クシクラゲ」の仲間など
直径わずか数ミリから5センチ程度の微生物たちです。
その種類は様々で見ていて飽きませんでした。





写真に納めるのは,大変でした。
ちゃぷんちゃぷんと波打つ状態で数ミリの被写体に照準を合わせる
のは根気がいります。



それでもねばって,何とか幾つかの微生物を撮りました。
これらの微生物は,魚の大事な食物の一つです。



小さな魚たちが微生物を食べ,そしてその小魚を大きな魚が食べて…
というふうに,食物連鎖は続いていきます。
栄養分の少ないサンゴ礁の海では,この微生物が大きな役割を果たして
いるのかもしれません。



大度海岸でも,沖からの風が吹くときに,この微生物たちが無数に
押し寄せてきます。そして満ち潮の時,イノーに潮とともに流れ込み
イノーの魚たちが流れに乗って食べています。
中には,大きな魚やイカの卵である卵塊が漂っていることもあります。



このような微細ないきものが海水の中に漂っていると思うと
海水はまるで濃厚な具だくさんのスープの様です。
最近の新聞で中城湾に火力発電所建設の計画があることを知りました。
漁業組合の組合長が懸念しているという記事でした。
火力発電所の施設の冷却のため一日あたり大量の海水を使い,熱を吸収した温排水が
再び海に帰されるらしいのですが,この時,海水とともに微生物や卵塊が一緒に
送り込まれてしまい死滅し,周辺海域の漁業に影響があるのではないかと
懸念しているとのことでした。これらの微生物を吸い込まない仕組みは
出来ないのでしょうか。

海水の温度はまだ低く長時間の撮影は体力を消耗します。
だけど,暖かな太陽の光が降り注いでいると,海の中も明るく魚たちも
元気なように見えます。
昨年生まれた魚の子どもたちも,過酷な環境を生き延びて,少しは
大きくなったようです。彼らの表情を見ていると人間の子どもと一緒だなあと
よく思います。



サンゴとサンゴの隙間では,ヤドカリが空き屋の下見をしていました。
中に腕をつっこんで,感触を探っています。
なかなか決まらないようなので,しばらく経ってから見に戻りましたが,
まだ,のぞき込んでいました。どうやら明日の朝までかかりそうです。



潮の止まった潮溜まりの中を静かに詳細に観察すると,何もなさそうなところに
けっこう生きものがいるものです。波も無く音もほとんどしません。
サンゴからは,酸素の泡が無数に,そしてひっきりなしに放出されています。
たくさんの酸素がとけ込んだ清らかな海水です。だから生きものがとても
元気です。
人間の勝手で捕らえられ狭い水槽に閉じこめられた魚たちは惨めだと思います。
水槽の魚はどれもストレスで元気が無く,人間の生活時間に拘束され夜とも
昼ともわからない環境でくたびれています。私は,いつも自然界の中の魚たちを
見ているので水槽に入れられた魚たちの不自然な行動や様子がよくわかります。

海の生きものは,彼らの海に入らせてもらい実際に静かに観察すれば
いいのです。水槽では見ることの出来ない本当の姿と生態を見ることが
できるのです。それは水族館でも見ることができません。
事実は,自然環境の中でしか見付けることができないのです。

水から上がるときに,アーサ付きヤドカリを見付けました。
ヤドカリもカラフルでおしゃれです。
ここは,モデルになってもらおうと何枚か撮りました。
ただならぬ気配におびえて,海藻の林をかき分けて逃げていって
しまいました。


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