潮溜りの魚

有光智彦

2009年12月09日 02:09

一月ぶりの更新です。
ブログの画像容量を更新したので,これからまた写真のブログを
続けることができます。

一ヶ月の間で海の水温が1℃下がりました。
現在24℃です。
冬の干潮は,昼間はあまり引きません。そのかわり,深夜にマイナスが
でるほどよく引きます。
11月から2月の間,友人と満月の深夜に大きな潮溜まりに入ろうと,
予定をたてているのですが,今年は天候が悪かったりして実現できて
いません。来月再チャレンジです。

今朝は真っ暗なうちからバイクに乗って近所の岬に出掛けました。
水平線には雲があるようです。
さほど寒くはありません。
三脚を立て,カメラをセットして白々と明ける空を撮影します。
とても神秘的で静寂のひとときです。
空気がとても清らかです。



今日も一日が始まります。

今日は,小さな小さな潮溜まりを観察してきました。
水深はわずかに50センチ,水際からゆっくり静かに入ります。
私の姿を見た魚たちは,一瞬慌てますが,静かに観察していると
平常の生活に戻ります。
最初に目に付いたのは,シマギンポです。海草にガブリ,ガブリ!と
食いついています。どうやら表面に付いた藻などを食べているようです。



あちらこちらと移動せず目の前にあるものをつぶさに観察をします。
するといろいろなものが見えてきます。
海草の陰には小さな花のようなケヤリムシが見えます。



体を動かさず頭だけをゆっくりと右の方に動かします。
カメラもそろりそろりと動かします。
海草の下にベラの稚魚がいます。まるで雨宿りをしているようです。



ベラの稚魚はこちらをちらりちらりと見ています。私は,大丈夫だよと語りかけます。
目線を正面に戻します。なにやら微細な生きものが動きました。
ほとんど透明です。
ベラの赤ちゃんです。生まれて,この潮溜まりに定着してどれぐらいが
経つのでしょうか。大きさは,7~8ミリぐらいでしょうか。なかなか写真に
撮れません。



右上の画像は,トリミングして拡大しています。
海草の潮溜まりは,稚魚にとっては無くてはならない場所なのでしょう。
ここで育って大きくなって,いずれイノーへ,そして外洋へと生息する場所を
変えていくのです。
しかし,潮溜まりは,人間の影響を一番多く受ける場所です。
現在も護岸工事が続けられている北谷(ちゃたん)の宮城海岸(砂辺)も
潮溜まりの上にコンクリートの塊を並べる工事をしています。
人工物で埋め尽くされた海は自然も人間も寄せ付けません。

あんまり一カ所に留まると寒くなってきます。潮溜まりの水温は外気の影響を
直接受けるので21℃ぐらいしかありません。

移動中に砂の中から2本の棒がにょきにょきと出ているのを見付けました。
どうやらカニが潜んでいるようです。ちょっといたずらをしてみたくなりました。



手をそーとカニの下に忍ばせます。
するともぞもぞと出て来ました!……カラッパです。
「しまった!見つかったか!」とばかり逃走を始めました。
海草の林を駆け抜けていきます。海草に付いた泡が散らばります。



そして,とうとう行き止まりに逃げ込んでしまいました。フフフフ…。



すると,砂の中に潜り始めました。『忍法・砂潜りんの術!』



すごいすごい!どんどん潜ります。



砂煙が消えました。よく見ると2本の目だけが出ています。



「どうだ!わからないだろ」と言っているようです。

次の手がないかもしれないので,これ以上おどかさないことにしました。

目線を海草に戻します。
なにやら小石の上に小さな青いものが付着しています。
肉眼ではよくわかりません。大きさは2~3ミリぐらい。
カメラで撮影します。これは貝?でしょうか。とても繊細です。



自然の美そのものです。
このような生きものも,よく観察すれば見付けることができるのです。
海草の草原の探検は興味が尽きません。

晴天の光を受けて海草は盛んに光合成をします。
葉っぱの上には無数の気泡が付いています。
酸素でしょうか。これもとても美しい姿です。



深い海や遠く外国の海に出掛けなくても,私たちの身近な海には,このような
美しく神秘的な場所があるのです。

そして,それは自然のままだからこそ美しく尊いのです。



数時間の撮影を終え,自宅に急ぎます。後方は夕焼けです。
しばしバイクを止めて太陽に感謝します。
自然の生きもの全てに等しく与えられる太陽の恵みに感謝したくなるのは
生きものとして自然なことのように思いました。


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