2009年04月24日

卵とお父さん

沖縄の今日は,雨。
それでも,潮はよく引くので出掛けました。
雨の中,ウエットスーツ姿でカブ号を運転します。
スリップは怖いので時速30キロのスロースピードです。
島では,ちょうどいいスピードです。
海岸に着く頃には,雨も止んで曇り空となりました。

海の中も少しづつ季節の変化が出てきました。
特に,生きものたちの産卵期のようです。
既に生まれたての小さな命が無数に泳いでいるのも見られます。
そんな小さな命を探して,まず潮溜まりに入ってみます。
みんなを驚かしたらいけないので,「失礼しま~す!みせてくださ~い!」と
言いながら,そろっと水中に入ります。水深僅かに30センチ。
残念ながら,小さな魚は留守でしたが,「シマギンポ」さんが
いました。
「すみませんが写真を撮らせてくださいますか?」と念じてからカメラを近づけます。

卵とお父さん

テレパシーが伝わるとは思いませんが,やさしいまなざしを向けることで
彼らの表情が変わるようにも思うのです。
生きものは,人の心を読むことができるようにも感じています。

卵とお父さん

潮溜まりから上がり,イノーに入ります。
イノーは干潮で外洋とは遮断されています。
水深は,1.5メートルぐらいですが,海底には毒を持った生きものも生息
しているので,安心はできません。

先日から観察しているハマサンゴのポイントに向かいます。
その近くに「キンセンイシモチ」の子どもたちの群れが留まっているからです。
どういう訳か,個体数が日によって少し変化しています。
私がカメラを近づけると,全員でこちらを見ます。

卵とお父さん

私は,彼らの横の姿を撮りたいのですが,なかなかそうはさせてもらえません。
何度も潜って撮影を繰り返します。

卵とお父さん

そのうち,サンゴの下からイシモチの仲間が出てきました。
少し大きい魚です。
よく見ると口の下辺りが膨れています。
僅かに開いた口の中には,卵がぎっしり詰まっていました。

卵とお父さん卵とお父さん

イシモチのお父さんです。
自分の口の中で子どもを育てる魚です。でも,私は,その様子をまだ見たことが
ありません。
お父さんは,口の中で卵がふ化するまで食事も取らずに頑張ります。
そういえば,身体はやせているようです。
このイシモチのお父さんを今後しばらく観察してみようと思います。
子どもたちがふ化したところを見てみたいものです。

近くの砂地で貝殻を拾おうとしたら,ヤドカリが住んでいました。
どうやら貝の横に開いた割れ目を利用して住んでいるようです。笑い。
かわいいので写真を何枚か撮らせてもらいました。

卵とお父さん卵とお父さん卵とお父さん

イノーから外洋に向かう水路部分に行ってみることにしました。
外洋は時化ていて大きな波がサンゴ礁を洗っています。
まだ潮は止まっているので静かな水中です。でも,まもなく満ち潮の流れが
出てきます。
水温は低く23℃。冬の温度です。ふるえがきます。

しばらく辺りを観察していると,「ヤエヤマギンポ」がこっそりとサンゴの隙間から
こちらをうかがっていました。笑い。

卵とお父さん

やさしい視線を投げかけると,こちら側に出てきました。
2匹います。夫婦でしょうか。

卵とお父さん卵とお父さん

写真を撮らせてもらっていると,どんどん近づいてきます。
あれあれ?目の前まで来ました。

卵とお父さん卵とお父さん

この魚の大人は警戒心が非常に強くけっして近寄ってはこないのです。
これは,私の心が通じたのだと勝手に思いこみ撮影を続けました。

ところが,しばらくすると彼の行動に一定のパターンがあることが
わかりました。どうやら,小さな穴の中が気になる様子です。
何度も何度ものぞき込んでいるのです。
そっと私も覗いてみましたが中は暗くてよくわかりません。

それで,ハッとしました。
「卵」です。おそらく穴の奥に彼らの大切な卵があるのでしょう。
そうだったのか!と思いました。
「ヤエヤマギンポ」のお父さんは,必死で卵を守ろうとしていたんです。
そういえば,サンゴの下からお母さんも心配そうにこちらを見ていました。

卵とお父さん

外敵の私が卵の近くにいるので,卵のことが心配でたまらなかったのでしょう。

卵とお父さん卵とお父さん卵とお父さん卵とお父さん

私に攻撃はしてきませんでしたが,しきりに穴の中をうかがう仕草を
していました。
早く気が付いてあげればよかったなと反省しました。
いずれ元気な赤ちゃんが誕生することでしょう。

彼らの世界も,子どもを思う愛は人間と全く同じだなと思います。
ただの「魚」ではないのです。
心があるように思えてなりません。

卵とお父さん


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この記事へのコメント
私も全ての生に心があると思います。。素敵な写真ありがとうございました。
Posted by syatyosansyatyosan at 2009年04月24日 02:48
syatyosan 様

こんばんは。
コメントありがとうございます。
魚や牛,鶏から豚まで,現代社会は全て「商品」や「物」として
扱っています。それぞれのいきものに心があり生きていることを
忘れています。人間だけが特別で,他の生物をどう扱おうと自由だ
と思いこんでいますが,そんなはずでいいわけはありません。
この一点にこだわり続けようと思います。
ほぼ菜食に変えて一ヶ月です。
これで動物に対する引け目が僅かに解消しつつありますが,
まだまだです。
ついつい内容が深刻になりがちですが,撮影中は,とても楽しい
時間を過ごしています。海の中が私の生活空間になっています。笑い。

よろしければまた見に来てください。
ありがとうございます。
Posted by 有光智彦 at 2009年04月29日 00:59