2018年01月12日

深夜の泡瀬干潟

 深夜の泡瀬干潟を歩きながら、生きものたちの観察をしました。
 泡瀬の干潮のピークは0時過ぎで、マイナス27cmまで引く
 予想です。潮は干潟の沖合いまで引くので、今夜はフジイロ砂洲を
 経由し、海草藻場まで行ってみることにしました。

 夜なので時間に余裕を持ち、最干の2時間前から沖に向かって歩き
 始めました。ところどころ水の中を歩きます。
 長靴に水が入らないように浅いところを選んで進みます。
 辺りを見回しても広大な干潟には私たち二人以外には誰もいないようです。
 同行する相棒は、やや心細いようでした。

 頭上にはまんまるのお月様が干潟を照らしていますが、それほど
 明るくは感じません。
 深夜の泡瀬干潟

 足元を照らす常用のライトの他、予備の電池と防水ライトも携行しました。
 ライトで足元を照らしながら、生きものたちを踏まないように歩きます。
 深夜の泡瀬干潟

 緑藻の上を巻き貝の仲間が移動中です。
 深夜の泡瀬干潟

 どこまで来たのかと振り返ると、街の明かりは遠くに見え、陸地から
 ずいぶん離れています。
 現在歩いている位置は、昼間なら目標となる建物や地形からすぐに
 わかりますが、夜は見えにくいので、おおよその位置を推測します。

 夜間は安全面を重視し、往路は生きものの観察をほどほどにして、
 目的地まで行き、復路でゆっくりと観察しながら陸地に戻ることに
 しました。無理をしない行動が原則です。

 また、不測の事態が発生した時のことを考えたりもします。
 例えば、もし干潟の沖で大きな地震に遭遇し、津波の危険があるような場合、
 どのようにしてどこに退避するのか?や、砂地では液状化のような現象が
 起きるのだろうか?起きるなら立っているより伏せた方が安全だろうか?
 など、万が一の事態の対処を考えておくと少しは安心です。

 途中、月明かりでうっすらと明るい干潟をカメラで撮影してみることに
 しました。
 感度の設定を高感度に合わせ、カメラをしっかり保持し、
 シャッターを切りました。
 感度を上げると画像にノイズが発生しますが、肉眼で見ているよりも
 明るく写りました。
 深夜の泡瀬干潟

 ひたすら歩くこと約40分、白っぽいサンゴのかけらが堆積する
 フジイロ砂洲へ到着しました。
 藻類などの漂着物の位置や砂の濡れている様子から、満潮の時、
 どこまで潮が上がってきたのかが分かります。
 砂洲の上に立つと、遠くまで続く道のように見えます。
 深夜の泡瀬干潟

 見上げると月の光に白く透けた雲が静かに流れていきます。
 深夜の泡瀬干潟

 歩いて来た陸地の方向を見ると、遠くに沖縄市の灯がキラキラと見えます。
 もうここまで来ると人工的な音はまったく聞こえません。
 風もほとんど無いので、大きな自然に抱かれている感じがします。
 深夜の泡瀬干潟

 冬の砂洲はアジサシたちの営巣が無いので足元を気にせずに歩けます。
 昨年の夏は満潮時にわずかに干出している場所に営巣していて、
 近づくとピーピーと高い声で飛来し、威嚇を繰り返し受けました。
 かつてのフジイロ砂洲は、満潮時でも干出している部分が広く、
 アジサシたちの営巣地になっていました。
 ところが、埋立地を造成するため、砂洲を分断する形で航路を掘削したところ、
 沖からの砂の供給が絶たれ、砂洲全体が年々やせ細ってしまったのです。
 逆に航路では、沖からの砂が海底に溜まり、数年で航行の支障となり
 昨年浚渫したばかりです。今後も繰り返し浚渫が必要になることでしょう。

 フジイロ砂洲から離れ、普段は水中にある海草藻場を観察しました。
 夏は水深が50cmほどあり、若草色の海草から放たれる無数の気泡の間を
 アイゴ仲間の幼魚たちが泳いでいる場所です。
 そこがわずか10cmほどの水深になっていました。
 長い海草は横向きに折り重なっています。
 しゃがみ込んで海草の間を覗きこむと、小さなカニやエビを見つけることができ
 ました。生きものたちは夜も活発に活動しているようです。

 少し気になったことは、海草の葉上にシルトのような汚れ?が付着して
 いたことです。光合成の支障にはならないのでしょうか?
 深夜の泡瀬干潟

 この他、昨年の春に初めて大発生した緑藻の仲間によく似た藻類が繁殖
 していたことです。今年も干潟の広範囲に発生するのでしょうか?
 このような藻類が干潟を覆ったことで、貝類やエビ、ゴカイの仲間などに
 大きな影響を与えました。
 巨大な人工島が潮の流れを変え、干潟の環境が変化したことも一因なのかも
 しれません。これから春にかけ観察を続けようと思います。
 深夜の泡瀬干潟

 陸に戻る途中、岩の上をタカラガイの仲間が移動していました。
 深夜の泡瀬干潟

 ジュゴンが大好きなウミヒルモも見つけました。
 深夜の泡瀬干潟

 模様のきれいなイモガイの仲間を見つけましたが、毒を持っている可能性が
 あるので触らずに見るだけにしました。
 深夜の泡瀬干潟

 今夜は約2時間の観察でした。


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