先日,友人から「近所の海の中は釣り糸だらけでサンゴが傷ついている」と聞きました。
場所は市街地の海です。
昨日と一昨日の2日間に渡り,その海へ行って来ました。
たくさんの人が釣りを楽しんでいます。
なだらかな小さな浜から海中に入ります。
透明度がいい海です。
おどろいたのは,市街地にこんなに美しい海が残っているということ。
それは,離島のようにすばらしいとは言い難いけれども,確かにそこには
生きものの小さな楽園が広がっていました。
岸近くの水深2メートルからサンゴの個体がポツリポツリと点在し,
岸からわずか20メートルほどのリーフエッジにはソフトコーラルの群落が
ありました。
そんな見事な光景も,よく見ると間違えであることに気が付きます。
たくさんのサンゴやソフトコーラルに釣り糸が絡み,死んでいるものが
多く見られました。
釣り糸の絡まったサンゴは,5メートル四方の範囲に約3から4個もあるのです。
どこから手をつけようかと途方にくれました。
見渡せば,必ず2,3の絡まったサンゴが目に付くのです。
次から次に回収しなければなりませんでした。
こっちも取ってあげたい,あっちも,そっちも,そしてきれいさっばりとして
元気を取り戻してもらいたいと思うと,なかなか海から上がれませんでした。
これから育っていく小さなサンゴにも釣り糸が絡まっていました。
これはかわいそうです。
この日の水温は低く,2人で頑張ってバケツ1杯と半分の糸と鉛と
疑似餌を約15個も回収しました。時間は2時間程度です。
疑似餌は聞くところによると,イカを引っかけて釣るタイプの釣り具だとのこと。
これには,鋭い針が二段になって取り付けてあり,回収の際に刺さってしまう
ことがありました。
イソギンチャクにこの針が引っかかっていました。どれぐらいの間,痛みに耐えていたの
でしょうか。ソフトコーラルにも針が食い込んでいました。
私は,人間の勝手な行為に怒りを感じました。
遊ぶ以上,その影響がどうなっているのか知る必要があるのではないか
と思いました。
私は次の日もこの海に来ました。
回収した釣り糸と鉛,それと疑似餌約10個,全部あわせてバケツに1杯分でした。
釣り糸は,どこかに引っかかり,切れて海中を漂流するのですが,サンゴなどに
引っかかると,潮流や波などの動きで一カ所に集約してきます。そして糸の団子
となり,サンゴの上で左右に揺れ続けます。サンゴのポリプたちは,活動が出来ずに
死んでしまいます。糸の団子が大きければ,サンゴそのものが丸ごと死にます。
回収はサンゴを傷つけないように注意が要ります。時間もかかります。
釣り糸は,劣化せず強度を保っています。
生きたサンゴのポリプを傷つけないように,小型のハサミで慎重に糸を切断し,
外していきます。
これで,だいぶんきれいになりました。しかし,回収したのは,ほんの僅かな
エリアにすぎません。
「サンゴ」は生きていて,どのような仕組みで何に役立っているかを
知らない人が多いと思います。サンゴがなくなれば魚も寄りつかなくなります。
釣り糸の技術的な改善はできないのでしょうか。
自然に解ける素材などの開発はどうなのでしょうか。
友人が釣具屋をあちらこちらと廻り聞いたところによれば,東レからそのような
素材の釣り糸が発売されているとのことでした。しかし,値段の高いことや
強度不足で買う人は希なようです。
サンゴに絡む釣り糸の問題は全国的な問題でしょうか。
現状をお知らせしたいと思いプログに載せました。
釣り具回収の合間に幾つかの生きものたちの生活を見せてもらいました。
そのなかでも,ソフトコーラルのふかふかのベッドで小魚が気持ちよさそうに
くつろいでいる様子がとても印象的でした。
また,ススメダイは,すばらしいサンゴのお家にお棲まいでした。
海から上がり,桟橋で釣りをしている方々に同意を得て回収した釣り具と
サンゴの現状を見ていただきました。
まずは知ってもらうことが大切だと思ったからです。