2009年04月10日
泡瀬干潟の4月現在
先日,NHKで泡瀬干潟の番組が放送されました。
この日,私のブログには,240件を超えるアクセスがありました。
そのほとんどが「泡瀬」について書いた記事に集中していました。
その反響の大きさに驚きました。
日本全国に泡瀬をもっと知りたいと思う人が沢山いるのです。
私は,嬉しいと同時に,その後の泡瀬の現状を新鮮な情報として
写真で知らせることも必要だと思いました。
そこで,数日間泡瀬干潟に通いました。
下の写真は4月6日現在の埋め立て現場ゲート前の様子です。
つい一ヶ月前までダンプカーがどんどん土砂を運んで出入りしていたのに今では
静まりかえり,ゲートを出入りする車は一台もありません。
どうやら予定の工事は一段階したのでしょうか。でも,現場全体を埋めたわけ
では無いと思います。おそらく一部分の工事が完了したのでしょう。
ちょうど,潮のよく引く期間でしたから広大な干潟をたくさん見る
ことができました。
4月6日は,潜ってみました。潜るといっても干潟は浅いので
僅か30センチの水深を這うように移動しました。
海水の透明度は非常に悪く1メートル先が見えないほどです。
ところにより水深が急に深くなっているところがあり,その縁に来たとき
には,そちら側に引き込まれそうに感じて,ぞっとしました。
生きもたちは,まず海藻では,世界中で沖縄にしか生息しない
マリモの様な形の「クビレミドロ(絶滅危惧種)」,つくしの様な「イソスギナ」,
うちわのような形をした「ハゴロモ」など。
貝類では,「キイロダカラガイ」や「ハナビラダカラガイ」,「イトカケツクシ」,
「ハボウキ」,「カワラガイ」,「ニッコウガイ」などです。
みんな埋め立ての悪影響の中でなんとか生息していました。
釣り人に,埋め立て後の魚の釣れ具合の変化について尋ねると,
「全く釣れなくなった,以前は小さなタコも釣れたのに…。」と言っていました。
上の写真は,左から順に,「クビレミドロ」,「イソスギナ」,「ハゴロモ」の海藻たちです。
下の写真は,左から順に,「キイロダカラガイ」,「イトカケツクシ」,「カワラガイ」と
「ニッコウガイ」です。
海から上がり,このブログのタイトルにもなっている「とんとんみー」を
探しに行きました。目的の魚は干潟の上で生活している「トカゲハゼ」です。
有明海の「ムツゴロウ」を思い浮かべてもらえばイメージが湧くと思います。
沖縄には,何種類か生息していますが,沖縄のおじーやおばーは,
全部ひっくるめて「とんとんみー」と呼んでいるようです。
残念ながらこの日は見付けることができませんでした。しかたがないので
昨年の5月,その近くの「比屋根湿地(ひやごん)」で見たとんとんみーを探しに行きました。
ところが,なんとそこは,土木工事の現場と化していたのです!!
「あきさみよぉー!(おどろいたの意)」
信じられませんでした。昨年見た時は,とんとんみーやカニやマングローブが
茂る都会のオアシスだったんです。
この話は長くなるので次回にまわしますが,でも,是非知ってもらいたいこと
なのです。
泡瀬干潟の埋め立て問題に気を取られている最中に,実はその直ぐ近くで沖縄県が
またもや開発をしていたのです。その開発については,現場にも,インターネットにも
きちんと説明があります。
しかし,僅かしかない生き物たちのオアシスの半分を壊して人間が管理する
自然が正常に機能するとは,とても思えません。本気で自然再生を考えているより
疑ったらいけないと思いますが,今までの開発の状況から土木工事がしたいが故の
開発にしか思えないのです。
その土木工事の現場で子供たちと出逢いました。
向かいの団地に住む小学生の混成チームです。
年齢も性別も関係なく一緒になって遊ぶのが沖縄の子供たちです。
私も直ぐに仲良くしてくれました。残ったマングローブを背景にして写真を撮って
あげました。しばらく話してから,さよならをしたのですが,干潟へ戻る私を捜して
再びやって来ました。笑い。それからが大変でした。
水中カメラをうばい,彼らはいろいろと撮影を始めるし,水中マスクも足ヒレも彼らの
かっこうの玩具となりました。潮が満ち始めた干潟で3時間もつきあったでしょうか。
つきあってもらったと言った方が正しいかもしれません。笑い。
子供の彼らは,彼らなりにいろいろな生きる問題を抱えているようです。
そんな,話も聴かせてもらいました。
最後に女の子が言ったひとことが忘れられません。
それは,「今日は春休み最後の日だったけど一番楽しかった日だった」と…。
次の日も,やはり「トカゲハゼ」は見あたりませんでしたが,カニが干潟で食事を
していたので撮影することにしました。
私の接近に驚いたカニたちは,素早く巣穴に駆け込みます。
その穴から目を離さず近づいて干潟に両肘を付き,しゃがみ込みます。
カメラを地面ギリギリに構え,待つこと数分。なんともなさけないスタイルです。
ゾロゾロとカニさんが出てくるのを待ちます。
でも,少しでも動くと悟られるので腕が痛くても動けません。笑い。
下の写真は「ヒメシオマネキ」です。大きなハサミがあるのがオスで無いのがメスです。
そうこうして撮影を始めて1時間以上経ったときに頭上から誰かの声がします。
カニも巣穴に飛び込んでしまいました。
固まった筋肉をグイィーと伸ばし上を向くと,よく日に焼けたおじーが立って
いました。「あんた,具合でも悪いのか?」と漁師のクバ笠をかぶったおじーが
話しかけてきました。笑い。
そりゃそうかもねぇと思いました。勘違いされてもしかたがないような格好で
動かないんですから。笑い。
おじーに事情を話し,やっとわかってもらえました。 と思いますが…。
このおじーは,投網専門でこの道50年のベテランでした。
漁で生計を細々と立ててきたとのこと。
沖縄の海の変化を身をもって知っている方でした。
この泡瀬干潟も埋め立てされる前は,貝も魚もものすごく取れたそうです。
それが,「サヨリ」も一匹も取れない。おそらく藻場が無くなり魚が卵を産む場所が
無くなったからだろうと言っていました。
以前は2時間もあればタライにあふれるぐらい取れたそうです。
下の写真は,左から順に,おじーの一投の瞬間2枚,知らない人にも分けてあげる
度量の大きさ,一番右は,網が水中で引っかかり悪戦苦闘しているおじー。笑い。
おじーは,埋め立てする側は儲かるかもしれないが,「われわれ海に関わる者は,
とても困っている」と,ぼそっと言いました。
沖縄が日本に復帰してから急激に海の破壊と汚染が始まったそうです。
また,戦争中のことも沢山知っていました。それは,本の中の記述ではなく
おじーの実体験に基づいた話です。とても強烈で,現実にあったのだということが
ビリビリと伝わりました。もっともっと話を聴きたいので再会を約束して分かれました。
次回は,比屋根湿地の話題と泡瀬の話の続きです。予定ですが。
この日,私のブログには,240件を超えるアクセスがありました。
そのほとんどが「泡瀬」について書いた記事に集中していました。
その反響の大きさに驚きました。
日本全国に泡瀬をもっと知りたいと思う人が沢山いるのです。
私は,嬉しいと同時に,その後の泡瀬の現状を新鮮な情報として
写真で知らせることも必要だと思いました。
そこで,数日間泡瀬干潟に通いました。
下の写真は4月6日現在の埋め立て現場ゲート前の様子です。
つい一ヶ月前までダンプカーがどんどん土砂を運んで出入りしていたのに今では
静まりかえり,ゲートを出入りする車は一台もありません。
どうやら予定の工事は一段階したのでしょうか。でも,現場全体を埋めたわけ
では無いと思います。おそらく一部分の工事が完了したのでしょう。
ちょうど,潮のよく引く期間でしたから広大な干潟をたくさん見る
ことができました。
4月6日は,潜ってみました。潜るといっても干潟は浅いので
僅か30センチの水深を這うように移動しました。
海水の透明度は非常に悪く1メートル先が見えないほどです。
ところにより水深が急に深くなっているところがあり,その縁に来たとき
には,そちら側に引き込まれそうに感じて,ぞっとしました。
生きもたちは,まず海藻では,世界中で沖縄にしか生息しない
マリモの様な形の「クビレミドロ(絶滅危惧種)」,つくしの様な「イソスギナ」,
うちわのような形をした「ハゴロモ」など。
貝類では,「キイロダカラガイ」や「ハナビラダカラガイ」,「イトカケツクシ」,
「ハボウキ」,「カワラガイ」,「ニッコウガイ」などです。
みんな埋め立ての悪影響の中でなんとか生息していました。
釣り人に,埋め立て後の魚の釣れ具合の変化について尋ねると,
「全く釣れなくなった,以前は小さなタコも釣れたのに…。」と言っていました。
上の写真は,左から順に,「クビレミドロ」,「イソスギナ」,「ハゴロモ」の海藻たちです。
下の写真は,左から順に,「キイロダカラガイ」,「イトカケツクシ」,「カワラガイ」と
「ニッコウガイ」です。
海から上がり,このブログのタイトルにもなっている「とんとんみー」を
探しに行きました。目的の魚は干潟の上で生活している「トカゲハゼ」です。
有明海の「ムツゴロウ」を思い浮かべてもらえばイメージが湧くと思います。
沖縄には,何種類か生息していますが,沖縄のおじーやおばーは,
全部ひっくるめて「とんとんみー」と呼んでいるようです。
残念ながらこの日は見付けることができませんでした。しかたがないので
昨年の5月,その近くの「比屋根湿地(ひやごん)」で見たとんとんみーを探しに行きました。
ところが,なんとそこは,土木工事の現場と化していたのです!!
「あきさみよぉー!(おどろいたの意)」
信じられませんでした。昨年見た時は,とんとんみーやカニやマングローブが
茂る都会のオアシスだったんです。
この話は長くなるので次回にまわしますが,でも,是非知ってもらいたいこと
なのです。
泡瀬干潟の埋め立て問題に気を取られている最中に,実はその直ぐ近くで沖縄県が
またもや開発をしていたのです。その開発については,現場にも,インターネットにも
きちんと説明があります。
しかし,僅かしかない生き物たちのオアシスの半分を壊して人間が管理する
自然が正常に機能するとは,とても思えません。本気で自然再生を考えているより
疑ったらいけないと思いますが,今までの開発の状況から土木工事がしたいが故の
開発にしか思えないのです。
その土木工事の現場で子供たちと出逢いました。
向かいの団地に住む小学生の混成チームです。
年齢も性別も関係なく一緒になって遊ぶのが沖縄の子供たちです。
私も直ぐに仲良くしてくれました。残ったマングローブを背景にして写真を撮って
あげました。しばらく話してから,さよならをしたのですが,干潟へ戻る私を捜して
再びやって来ました。笑い。それからが大変でした。
水中カメラをうばい,彼らはいろいろと撮影を始めるし,水中マスクも足ヒレも彼らの
かっこうの玩具となりました。潮が満ち始めた干潟で3時間もつきあったでしょうか。
つきあってもらったと言った方が正しいかもしれません。笑い。
子供の彼らは,彼らなりにいろいろな生きる問題を抱えているようです。
そんな,話も聴かせてもらいました。
最後に女の子が言ったひとことが忘れられません。
それは,「今日は春休み最後の日だったけど一番楽しかった日だった」と…。
次の日も,やはり「トカゲハゼ」は見あたりませんでしたが,カニが干潟で食事を
していたので撮影することにしました。
私の接近に驚いたカニたちは,素早く巣穴に駆け込みます。
その穴から目を離さず近づいて干潟に両肘を付き,しゃがみ込みます。
カメラを地面ギリギリに構え,待つこと数分。なんともなさけないスタイルです。
ゾロゾロとカニさんが出てくるのを待ちます。
でも,少しでも動くと悟られるので腕が痛くても動けません。笑い。
下の写真は「ヒメシオマネキ」です。大きなハサミがあるのがオスで無いのがメスです。
そうこうして撮影を始めて1時間以上経ったときに頭上から誰かの声がします。
カニも巣穴に飛び込んでしまいました。
固まった筋肉をグイィーと伸ばし上を向くと,よく日に焼けたおじーが立って
いました。「あんた,具合でも悪いのか?」と漁師のクバ笠をかぶったおじーが
話しかけてきました。笑い。
そりゃそうかもねぇと思いました。勘違いされてもしかたがないような格好で
動かないんですから。笑い。
おじーに事情を話し,やっとわかってもらえました。 と思いますが…。
このおじーは,投網専門でこの道50年のベテランでした。
漁で生計を細々と立ててきたとのこと。
沖縄の海の変化を身をもって知っている方でした。
この泡瀬干潟も埋め立てされる前は,貝も魚もものすごく取れたそうです。
それが,「サヨリ」も一匹も取れない。おそらく藻場が無くなり魚が卵を産む場所が
無くなったからだろうと言っていました。
以前は2時間もあればタライにあふれるぐらい取れたそうです。
下の写真は,左から順に,おじーの一投の瞬間2枚,知らない人にも分けてあげる
度量の大きさ,一番右は,網が水中で引っかかり悪戦苦闘しているおじー。笑い。
おじーは,埋め立てする側は儲かるかもしれないが,「われわれ海に関わる者は,
とても困っている」と,ぼそっと言いました。
沖縄が日本に復帰してから急激に海の破壊と汚染が始まったそうです。
また,戦争中のことも沢山知っていました。それは,本の中の記述ではなく
おじーの実体験に基づいた話です。とても強烈で,現実にあったのだということが
ビリビリと伝わりました。もっともっと話を聴きたいので再会を約束して分かれました。
次回は,比屋根湿地の話題と泡瀬の話の続きです。予定ですが。
Posted by 有光智彦 at 01:13
│海 泡瀬干潟
この記事へのコメント
おひさひぶりです。大分の増田です。
ここくじゅうでは、3月末に長者原、4月にはいってようやく坊ガツルの野焼きが終了しました。3月に由布院での野焼き事故(4名の死亡)などがあったり、天候が悪かったりで今になりました。野焼きあとには、キスミレが一面に咲いています。じきに桜草も咲き始めます。これらの花は野焼きがなくなればすぐになくなります。これらの花には、ヌマガヤ、カヤネズミ、マルハナバチのつながりがあってそのひとつが欠けたらもうなくなってしまいます。
有光さんの活動には常に頭が下がります。「具合を悪く」しないでください。
くじゅうの山から海を見つめています。
ここくじゅうでは、3月末に長者原、4月にはいってようやく坊ガツルの野焼きが終了しました。3月に由布院での野焼き事故(4名の死亡)などがあったり、天候が悪かったりで今になりました。野焼きあとには、キスミレが一面に咲いています。じきに桜草も咲き始めます。これらの花は野焼きがなくなればすぐになくなります。これらの花には、ヌマガヤ、カヤネズミ、マルハナバチのつながりがあってそのひとつが欠けたらもうなくなってしまいます。
有光さんの活動には常に頭が下がります。「具合を悪く」しないでください。
くじゅうの山から海を見つめています。
Posted by 増田 at 2009年04月17日 23:51
増田 様
こんばんは。
コメントありがとうございます。
九州は本格的な春まっただ中でしょうか。
良い季節ですね。
沖縄では,まだ夏の雰囲気はありませんが,時折,
突然に真夏の一日が出現したりします。笑い。
生態系は長い長い歳月をかけて作り出された仕組み
でしょうけど,たった一つが欠けても全てのバランスが
崩壊してしまいますね。
その様な視点から本気で自然をみてくれる人が
これから先,少しづつでも増えてくれれば良いのですが。
沖縄は,泡瀬の埋め立ての次は,辺野古の基地建設の
アセスの問題でもめています。
アセスの問題の以前に基地を造るか造らせないかが
焦点だと思います。
だまされないようにしなければなりません。
でも,沖縄だけの問題にしたくはありません。
本土に向けて,僅かな情報ですが,伝えていきたいです。
南の小さな島から本土を見つめています。
こんばんは。
コメントありがとうございます。
九州は本格的な春まっただ中でしょうか。
良い季節ですね。
沖縄では,まだ夏の雰囲気はありませんが,時折,
突然に真夏の一日が出現したりします。笑い。
生態系は長い長い歳月をかけて作り出された仕組み
でしょうけど,たった一つが欠けても全てのバランスが
崩壊してしまいますね。
その様な視点から本気で自然をみてくれる人が
これから先,少しづつでも増えてくれれば良いのですが。
沖縄は,泡瀬の埋め立ての次は,辺野古の基地建設の
アセスの問題でもめています。
アセスの問題の以前に基地を造るか造らせないかが
焦点だと思います。
だまされないようにしなければなりません。
でも,沖縄だけの問題にしたくはありません。
本土に向けて,僅かな情報ですが,伝えていきたいです。
南の小さな島から本土を見つめています。
Posted by 有光智彦 at 2009年04月24日 01:05