2012年10月30日

泡瀬干潟・危機的状況

現在埋め立て工事が進行している区域(人工島建設現場)は、
とてもすばらしいサンゴ礁が存在した海域でした。
そして今度は、最後の砦とも言うべき泡瀬干潟でも最も重要な
海域がマリーナ建設のために破壊されようとしています。
マリーナは人工島の施設として建設されます。
その海域には既に汚濁防止膜が張られ、浚渫を行う作業船が来ています。
もう工事を始めているかもしれません。

浚渫工事はマリーナへ出入りする船のために海底を掘り起こして
水深を深くするものです。その時使用されるのが、巨大な重機です。
(ゲームセンターにあるUFOキャッチャーのような形のもの)
工事の海底にはウミエラやフジイロハマグリなど非常に稀少な生物が
生息しています。海底を掘り起こせば死滅してしまいます。
さらに、マリーナには防波堤も建設されるので埋め立ても実施
されるようです。


泡瀬干潟・危機的状況
マリーナ建設予定地に停泊する作業船(2012年10月27日撮影)
海の透明度を見てください。この場所にマリーナを造るのです。


これからお見せする写真は工事開始前に撮影した海中の様子です。
撮影当日はやや風が強く波が立っていたため海中も少し濁っています。
撮影日は2012年10月14日です。
当日は大潮の干潮。水深は約60㎝でした。
春から夏の大潮と違い、あまりひかないので波打ち際からマリーナ建設
予定海域へ向かって海の中をかなり進みました。

画像をクリックすると大きくなります。

泡瀬干潟・危機的状況泡瀬干潟・危機的状況泡瀬干潟・危機的状況
海底にはさまざまな海草が茂っています。
1本の海草の長さは約10㎝です。
まるで風になびくように葉っぱが揺れています。
清らかです。

海草藻場にはヒトデの仲間、いろいろなナマコ、魚の子ども、甲殻類、
無数の小さな貝たちが生きています。


泡瀬干潟・危機的状況
コブヒトデです。20㎝ぐらいはある大きなヒトデです。
たくさん見ることができます。


泡瀬干潟・危機的状況
好きな人は希かもしれませんが、ナマコは海底の砂と一緒に有機物を取り込み、
砂のみを排出します。ナマコは砂を綺麗にします。
海底の砂は持って帰りたくなるほど白くて美しい砂でした。
少しだけ持って帰ろうかと思いましたが、ここがとても神聖な場所であり、
底知れない畏れを感じたので持ち帰ることをひかえました。


泡瀬干潟・危機的状況
美しい模様の巻き貝が移動中です。大きさは2~3㎝です。
見たことの無い貝でした。


泡瀬干潟・危機的状況泡瀬干潟・危機的状況
魚の子どもです。ヒメジの仲間でしょうか。大きさは3~4㎝ほどです。


泡瀬干潟・危機的状況
そしてこれがウミエラです。腔腸動物の仲間です。
海底から6~8㎝ほど出ていましたが、数十㎝は延びるそうです。
淡い紫色が綺麗です。


泡瀬干潟・危機的状況
一抱えもあるイソギンチャクにはエビの仲間が棲んでいました。


泡瀬干潟・危機的状況泡瀬干潟・危機的状況
海底のくぼみには、2~3㎜ほどの小さな貝殻がたまっていました。
海草藻場にはこんなにもさまざまな貝が生きているのです。


泡瀬干潟・危機的状況泡瀬干潟・危機的状況
海草の花々です。ちょうど海草の花期なのでしょうか。


泡瀬干潟・危機的状況
砂に半分うもれながらゆっくり分解されていく大きな貝殻を
見つけました。おそらくホラガイでしょうか。
大きさは30㎝を越えているように見えました。
長年生きた主だったのでしょうか。
ここでもうまく説明はできないのですが、何か強い気のようなものを
感じてその場からすぐに離れたくなりました。


泡瀬干潟・危機的状況
工事区域を示す旗です。
まさにここが破壊されるのです。



ウミエラ館の館長が工事が行われる海域まで泳いで行ってきたようです。
失礼ではありますが、館長はそれほどシュノーケリングは上手でなかった
はずです。
海の生きものたちのことを想い、居ても立ってもおれなかったの
でしょう。よろしければ見てみてください。
ウミエラ館のブログhttp://umierakan.ti-da.net/e4028256.html

また、泡瀬干潟の生きものたちのことを写真と真摯な文章でつづった
『きゅうりぐさ通信』というブログがあります。
こちらも書く人の自然界に対する誠実さが伝わってくる良いブログだと
思いますのでとてもお薦めです。
きゅうりぐさ通信のブログhttp://kyuurigusa.ti-da.net/



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Posted by 有光智彦 at 22:50 │海 泡瀬干潟
この記事へのコメント
ご無沙汰しています。泡瀬も東江も嘉陽も、どんなに貴重ないのちの海であっても、次の世代に信託されている大事な財産であっても、人間たちの巨大な欲望の対象にいったん選定されてしまったら・・・もう、歯車は止まることはない。沖縄が日米安保の生贄として差し出されている構造と重なるけれど、そのことに沖縄県民は気付かない・・・のでしょうか?心が折れてしまいそうになりますね。私たちの世代のツケは、未来の県民が引き受けて行くしかないのでしょうね。それを止めることが出来なかった私たちの罪でもあります。ただ、ひとつ「見守り続ける」ことだけが、私たちの役割なのかも・・・知れないと思っています。
Posted by ま~め at 2012年10月31日 23:42
ま~め 様

こんばんは。
お返事をするのに書いては消し、書いては消しを繰り返しています。
書きながら、結局私もま~め様と同感であると同時に、解決の方法
が思いつかないのです。
去年まで美しい砂浜が続いていた宜野座の松田潟原はとうとう
重機で組んだ石積みのきたない護岸に変貌を遂げてしまいました。
自らの星(お家)を自らの手で破壊しつくして生きものみんなが
住めない星になるのでしょうか。
きっと火星人もどこかの星の異星人も地球の人類の姿を見て
ファーストコンタクトは後500年ぐらい保留だろうねと言っている
ことでしょう。
微々たる力ですが出来ることを続けていきます。
コメントありがとうございます。活動の原動力になります。
北と南、それぞれの場所ですが、根はつながっておりますので。
Posted by 有光智彦有光智彦 at 2012年11月03日 22:49
有光さん

3年くらい前にヤポネシアのしょーこちゃんの誕生日に同席していた、カエル好きの猫五郎です。

多忙な日々を生きるのに精一杯で、有光さんの記事に感じるものは多々あれど、なにも行動できずにいます。

有光さんの目を通して、現場の様子を認識することだけが僕に今できるすべてなのかもしれません。

次の記事を楽しみにしています。
Posted by 猫五郎 at 2012年11月12日 20:17
猫五郎 様

こんばんは。
お久しぶりです。

実際私も、生活維持のための仕事をしているので本業の活動は
以前のようにできない状態です。
今私にできることは、土日に見てきたことなどをブログやホームページで
アップすることです。
海で出逢った元気な生きものたちの素顔や、反面人為的な負荷の現場など
見てきたことをそのまま見てもらえればと思います。

たまにしか更新しないブログですが、それでも見ていてくださる方々が
いてくれることは、とても有り難いことです。励みになります。
猫五郎さん、ありがとうございます。
今は充電期間ですが、独自で動けるようにベストをつくしたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします。
Posted by 有光智彦 at 2012年11月12日 23:41