2011年03月14日

意見交換会

おそらくこのブログを見て頂いていた東北地方の方がおられたことと
思います。大変な災害に見舞われている中でどう気持ちを伝えて良いか
わかりません。

3月9日に東江公民館で意見交換会がありました。
その結果をお伝えします。

北部土木事務所,東江区民(一部の方たち),
東江以外の市民,サンゴの博士・日本自然保護協会(安部真理子さん),
サンゴ・海洋生物の博士であるキャサリン・ミュージックさんも会場に
姿がありました。
残念だったのは,ただ一人の防災の専門家の方が欠席されたことです。

その様子を動画で記録していますので,興味のある方は見てください。
ところどころ音声が聞き取りにくいところがありますが,
どのような話し合いがなされたのか理解できると思います。

http://jisedai.ti-da.net/

結論から申しますと,残念なことに意見交換会には成らなかったという
ことです。言い換えるなら意見を述べ合うだけに終わってしまいました。

まず,北部土木事務所が事業の概要と必要性を述べました。
続いて,私どもの名護の自然を守り次世代に伝えたい市民の会からは,
私がスライドを使い,海の中の様子と人工海浜の危険性を説明しました。
続いて安部さんがサンゴの一般的知識と東江の海の活用を提案しました。
その後,地元の青年が思いを伝えました。また署名が900人分あることも
伝えました。

そのあと,東江区民の中で過去に高波被害を受けた5.6人の方が
高波の怖さと事業の推進を強く求めました。

発言は被害を受けた東江区民が優先ということで,一般者の発言は,
手短にお願いしますということでした。

私たちから北部土木事務所に幾つかの質問をしましたが,
すべてを答えないまま閉会しました。

このまま一回切りで終わる前提だったようで,私たちは,継続した
話し合いを求めて発言しましたが,認められませんでした。

話し合うために会を開いてもらったのですが,高波被害は最優先される
べきで事業は継続します,ご理解くださいが結論でした。

私たちは海を守りたいがゆえに砂を入れない方法を技術者やいろいろな
識者の話を聴いて対策を検討しませんかと会場でも提案したのですが,
とても納得できない結果でした。

ただ高潮の被害に遭われた方々の気持ちはよく伝わりました。

私たちは幾つかの問題提起をしました。
その幾つかを紹介します。

一つ完成している人工海浜は,斜面が急で,場合によっては海水が白濁して
いるので最初に現場を見た時,ここに重大な危険性がはらんでいることを
直感で認めました。その直感は,20年間消防署に勤め,その半分以上を
水上消防隊として水難の現場を見てきたからわかることです。また,
救急隊も経験しているので,救出後の生存率のこともよく理解しています。
このことにたいして北部土木事務所はコメントをしていませんし,
この事業が完成後の管理は県なのか名護市なのか検討中ということで,
はっきりしていません。
このような人工海浜をもう一つ造ることは危険が倍増するということです。
東江区民が高潮から守られなければならないのは当然ですが,この浜を
利用するのは県外や市外の人たちもいるわけですから,よほど検討を
重ねないと事故が起こってからでは遅いということです。
このようなことも話し合う必要があったと思います。

下の写真は正に私が指摘している危険性が認められる人工海浜で
遊んでいる子供たちです。子供は必ず海に入りたがります。
急に深くなるので溺れる可能性があるということです。
写真をクリックすると大きくなります。

意見交換会意見交換会


また,人工海浜がもう一つ出来ると,ここが若者のたまり場になる
可能性があることを想像しているでしょうか。夏の夜は酒を飲み,
音楽をガンガンかけて,ゴミを捨て,花火を打ち上げて馬鹿騒ぎをする
やからが市街からも来るということです。それを訴えても,解決する
ことは困難です。北谷の宮城海岸がよい例です。

さらに,人工海浜の砂の流失は突堤を設けたことで無いと豪語した
北部土木事務所の班長の発言は,正しいのでしょう本当でしょうか。

げに日本国中の人工海浜の砂は流出し,継続して海砂を購入し,補充して
いるのです。千葉市では,砂の費用がまかないきれず人工海浜は閉鎖に
なっています。また沖縄本島北谷のサンセットビーチ,与那原の
西原マリンタウンのビーチでも同様に砂を補充し続けています。

仮に管理が名護市になった場合,砂の流出があればそれを永久的に
負担しなければならないのです。この浜はビーチではなく,防災のための
人工海浜なので,閉鎖すればいいということにはなりません。
さらに風による飛砂は,実際に被害が出ているのに未解決のままです。
下の写真は数日前の西原の人工ビーチのようすです。陸側に上がった砂を
海側に戻している作業をしています。また砂も過去に補充しているそうです。

意見交換会意見交換会

そのようなことが話し合われていないのです。

砂で海を埋め,もう一つ人工海浜が出来たときのことを想像すると,
たくさんのことが見えてきます。その負担を背負うのは,
施設の管理者(県か名護市か)であり,海辺に住む住人なのです。

私たちは,砂の投入続行が東江区民の総意だとは思っていません。
実際に東江区民の多数の署名もあります。
また,防災は区民にとって必須条件ですが,この自然の海はみんなの海でも
あるように思います。
だからこそ,防災が確立され,同時に海を残せる方法を一緒になって
検討したかったのです。
下の写真は,これから砂で埋められる海の生きものたちです。
おそらく逃げられないでしょう。

意見交換会意見交換会意見交換会

とても残念でなりません。



http://jisedai.ti-da.net/


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Posted by 有光智彦 at 01:21 │名護市東江 人工海浜
この記事へのコメント
交換会の中継、リアルタイムで見ていました。住民の方の高波への恐怖の声にも、またそれを含めて用意されたようなシナリオにも、問題の難しさ、自分の認識不足も感じ、ショックを受けました。
その直後の津波の映像、波の力の恐ろしさを知るとともに、この自然の力にはこれまでの人間の対策では太刀打ちできない、人間の社会のあり方と自然とのつき合い方の根本が問われているのだろうと思いました。
そんな事を言うとまた、「じゃあ海辺の人間は涙を呑めというのか!!」と例の剣幕で怒鳴られそうですが、その被害を抑えるためにも、人間の暮らし方の方を考えて行かなければいけないのでは、とここ数日考えていました。

・・こんな抽象的なコメントをかき込もうかどうしようか迷っていたら、ちょうど次の記事で有光さんが似たようなことを書かれていたので(笑)、恐れずコメントさせて頂きます。

ちなみに僕は千葉に住んでいますが、海沿いではないこともあり、部屋のものがけっこう落ちて来ただけで身は無事に済みました。
Posted by かいづけん at 2011年03月14日 02:05
かいづけん 様

こんばんは。
お怪我がなかったことが幸いです。
まだ余震が続いているとニュースで聞きます。
原発も怖いですね。
沖縄は離島ですから同様な事態になったときは
物資などが数日で底をつくかもしれませんね。
いつ沖縄で起こっても不思議ではない地震,
かつて明和の大津波もあり,今でも陸上に
押し上げられた巨大な岩を宮古島などで
見ることができます。
今回の災害は,確かにさまざまな視点で
私たちの生き方を変えなければならないことを
気付かせているように思います。
友人から聞いた話ですが,北海道では既に
高台に住居を構え,海沿いの仕事場へは車で
通勤している方々もいるそうです。
おそらく巨大な防波堤を築くよりも,都市機能を
高台に再構築することの方が理にかなっている
と思えます。名護の東江も何も解決していませんが,
今回の津波の威力を見ていると,高潮対策の構築物が
全く役に立たないだろうことが明らかだと思います。
また,地球の気温が2度上昇すると水面が50センチ
上昇すると言います。こうなると,何をどう構築したら
よいのか結論は出ないでしょう。
それよりも,ものすごく大変なことですが,いつ来るか
わからない津波におびえて暮らすよりも,やはり高台に
引っ越しを計画する方が安心だと思いました。
Posted by 有光智彦 at 2011年03月16日 23:47
 初コメントです。45年程前の名護は、本当に白い砂が綺麗な沖縄一の浜辺でした。 今の様な温暖化でも無く、確かに台風が良く直撃したものでした。 それでも、自然に助けられたノかな? 思うのは、今回の東北関東大震災での不自然な高波 テレビの解説に因ると、防波堤が在る為の海底の深さの件を話していました。

 浸水や被害は確かにありましたが、海中のサンゴ、白浜を大波が打ち寄せても名護の七曲がりの自然の地形にて、大波が分散したのは確かに覚えています。
 波が打ち寄せては戻り、打ち寄せては戻りつ 自然の力により島の形が出来上がって来たのだと思います。 それは地球の営みの中で出来上がった地形だと思います。

 それを、私達が島の形が変わる程に引っかき廻してしまっている事の結果の様な気がします。

 とても、哀しいです。 

 今更と思う方も居るかと思いますが、海洋博の為の埋め立てをしていなければ、きっと名護湾にて、フォイールウォッチング(鯨見学)が出来ていたのかな~? なんていつも思う私です。

 埋め立ての件は、正直つい最近まで知りませんでした。 
 
 海洋博の埋め立てを終え、最初の頃は確かにサンゴは死んでしまっていたかも知れません。 私自身、名護の海は死んでしまった~! とず~とつい最近まで思っていました。
それが、有光さんの写真展を見た時は、正直気分良いショックと感激と!!
 生きている!サンゴが再生している!

 今更遅い!では無く! 気付いたからこそ、動き始める事が大事なのでは無いかと思います。 同じ過ちは繰り返して欲しく無いです。

                                
Posted by piccolopiccolo at 2011年03月30日 02:18
piccolo 様
こんばんは。
コメントありがとうございます。

自然は人が手を出さなければ,自然の摂理にしたがって
どこまでも成長しようとします。
名護の海の生きものたちも同じだと思います。
どんなに過酷な状況に置かれていても,かろうじて命の継承は
続いていきます。それを目撃したとき,驚き感動,一方で私たち人間が
引き起こしてきた負荷への申し訳なさに責任を感じます。

私たちは日常生活の忙しさから自然界への洞察が疎遠となるばかりで,
地球が宇宙の中のたった一つの星であるというまぎれもない事実すら
認識できなくなっています。
いったい人類はどこへ向かうのでしょう。

私たちはどうしていきているのか。
命とはなんなのか。
私たちは誰なのか。
宇宙に存在する意味は…。

このような大きな視点を疑問を持ち続けなければ,
おそらく人間本位の生き方を続ける結果となるのかも
しれません。

地球環境は待ったなしの状況な置かれています。
人類が科学技術を駆使し,急成長を遂げて約200年,
精神は後退し続けているように感じるのは私だけでは
ないでしょう。
この先どのように生きるかの選択を私たち一人一人が
しなければならない時代に来ていることは明白である
ように思います。

経済至上主義,発展しなければならない,効率優先,
私欲,過剰な物欲と消費,利己主義…その結果が
今の社会の現状を端的に表しているように思います。


でも,ほんとうの幸せや大切なことに気づいた謙虚で誠実な心の
持ち主が,周囲への小さな一灯をかかげ続けるなら
暗夜を進むものたちのささやかな道しるべになるに
違いありません。

あきらめずに灯火をかかげ続けましょう。
Posted by 有光智彦 at 2011年04月05日 01:23