2011年04月10日

人間の都合

東江の小さな海はどんどん埋められ続けている。
お日様の元で母なる海を埋める工事が続いています。

人間の都合

私は沖縄県のサンゴ移植プロジェクトを信じることができない。
サンゴを増やそう海を守ろうといいながら一方で,サンゴの海を
埋め続けている。泡瀬干潟でも国が予算を付け沖縄県が推進する。
仲井真県知事も推進を主張している。
また,宮古島の海中展望塔建設は,生き生きとしていたサンゴ礁生態系を
破壊して構造物を海中に建設し,観光の要にしようとしている。

本当に人間の都合でしか自然界を見ていない。

そこに今まで住んでいた生きものたちは,ことごとく住処を破壊され
命を奪われている。
私には時代錯誤の考え方のように思えてならない。
特に泡瀬干潟は,わざわざ液状化や津波で被害を受けるであろう埋立地を
今から造成しようとしている。いったい国も県も何を考えているのか
訳がわからない。国策は大丈夫なのだろうか。

人間社会に必要な工事だからと対策も検討も慎重に行われず
さまざまな公共事業が進められる。そして一端動き出したら,
OFFスイッチの無いこれっきりボタンを押したようなもので,省みたり
することは無く絶対に止まらない。
立ち止まって現状を再点検しようともしない。

沖縄県は本気でサンゴ礁生態系を守る意志は無いと私は思う。
驚いたことに沖縄県の護岸を整備している県庁の海岸防災課は,
同庁舎内の自然保護課と事業についてのどのような自然への負荷が
あり,どのように進めたらいいかということすら連携は取っていない
ようである。何故連携して事に当たらないのか理解できない。

沖縄県北部土木事務所は,東江の小さな海はサンゴの被度0~5%で,隣にも
同様な生態系があり,埋める海域からサンゴの一部とクマノミの
一部を移植したから環境にも配慮しているので事業を推進すると
当初から最後まで全く変わらなかった。
私たちの申し入れを真剣に検討さえされていない。

私は,沖縄県北部土木事務所に申し入れのたびにサンゴ礁生態系には
被度では計れない命の営みがあることを何度も説明してきたが,
写真を見せるとこれは写真だからといって笑われてしまった。

今の人間社会では,人間以外の生きものの命の尊さをほとんどと
言っていいほど省みることはない。

私たちが食べている牛や豚やニワトリ(卵)の育て方を知っている
だろうか。以前DAYS JAPANという雑誌で特集が組まれていたが,
私はそれを見て知って肉類を買うことをやめた。

ニワトリの場合は放し飼いは限られている。ほとんどが
けずくろいさえできない幅のスペースの中で一生を過ごす,
そして産んだ卵を自ら温めることが出来ずにまた卵を産むことに
なる,その繰り返しだという。1年で卵を産まなくなって廃鶏,
肉となって市場に出る。
また,病気にならないように抗生物質を与え,通常の成長を待たずに
成長を促進させるような手法を使う。

私は以前肉類が好きだった。今でも食べたいという欲求が時々ある。
しかし,人間のために産まされ,生かされ,工業製品のように育てられる
生きものたちのことを思うと食べる気も無くなる。
しかし,いろいろな加工製品に肉が材料として使われているので,
買うときにいちいち商品の材料を確認しなければならない。
こんなことをしていたら何も食べるものがなくなってしまいそうだ。

昔のように豚などを大切に飼育し,年に一度の祝いの場でさばいて命に
感謝をして頂くことはもう忘れてしまったのだろうか。

生きもの世界では自分の生命の維持に必要なだけしか捕って食べないし,
無駄にはしない。
食物連鎖の頂点は人間だと言っているけど,アメリカンネイティブの
考えでは世界は丸い円で人間も死んだら肉体を自然界に解き放ち,
他の命を支えると考えられていると友人から教えてもらった。


私は現在の人間が怖い。どこまで人間の都合の社会なのだろうか。

これでいいはずがないと思う。

人間社会にはその社会の中でのなにらかの行動理由があるが,
生きものの側から見るとまったく人間の都合でしかない。

私は,東江の小さな海に関わってから,人間社会と生きものたちの関係について
思い悩んできた。事業に待ったをかけてたくさんの方々に迷惑をかけたことや
私自身のしている行動は反社会的な行動なのかどうか。
何度も何度も現場で考えてきた。

しかし,実際に埋められていく命を自分のこの目で見,私ははっはりと自覚した。
何が間違っているのかを。
だから私は人間が怖くなった。
どうしたら生きものたちの命も大切に考える社会ができるのだろうか。

東江の小さな海の周辺は生きものの腐った臭いが漂っている。
この臭いは3月28日頃から感知していた。
4月8日現在,臭いは強くなっている。

人間の都合人間の都合人間の都合

広がった白濁はただの色水ではない,細かな砂が漂ってる。
この微細な砂が今から埋められようとしている生きものたちの上に覆いかぶさり
生きものが死に始めているのです。

人間の都合

海が死に始めている。これが埋め立てなのです。

人間の都合

汚濁防止膜もやぶれたままです。誰かが修理には来ているのですが,
濁った海の中では作業も出来ないのか,それとも膜に強度がないのか,
いづれにしても白濁は外海に漏れ続けている。

人間の都合

満潮の時は膜と海底の間に1メートルぐらいの隙間があり,
これでは白濁は漏れてしまうでしょう。

人間の都合

過去40年,日本各地の海でこのようにして生きものを埋めてきたのです。
沖縄県内に約40カ所近くある人工ビーチもこうやって造ったものなのです。
楽しそうに人々が遊んでいる浜の下には無数の命が埋まっている。

以下の写真は,工事開始前の早朝の多少澄んだ海に潜って撮影してきた
埋められようとしている生きものたちの姿です。
それでも,非常に濁っていて,海面から2メートル下まで何も見えません。
満潮で水深3メートルの海底に下りて多少視界が開ける程度です。
そのような環境で5時間程度撮影を続けましたが,最初の1時間で
気分が悪くなりました。見えないので,平衡感覚を維持するのが難しく
船酔いのような状態だったのかもしれません。
また,海水には生きものが腐敗した汚水となっていることも気分が悪く
なった原因かもしれません。


写真はクリックすると大きくなりますが,とてもショッキングな
画像なので見れる人だけ見てください。
そして海を埋めるということがどういうことなのかを考えてみてほしいと
思います。


下の写真は,撮影した日4月8日に埋められる予定だったのサンゴです。
もう砂の下かもしれません。

人間の都合人間の都合

下の左の写真が本当の海底の濁りの様子で,
右が見えやすいように画像処理を施した写真です。
美しかった海藻も痛めつけられています。

以下の写真はすべて補正しています。
実際はひどく濁っている状態です。

人間の都合人間の都合

大きさ約1メートルのソフトコーラルです。砂に埋もれています。

人間の都合

広角レンズで撮影していますが,視界が悪いので近距離での撮影しか
できません。

人間の都合

ずるずると砂の壁が崩れて生きものを飲み込んでいきます。

人間の都合人間の都合

枝状のサンゴが埋まっていきます。

人間の都合

ソフトコーラルの赤ちゃんです。
なんのために生を受けたのでしょうか。

人間の都合

テーブル状のサンゴも間もなく砂に埋まります。
私にはどうすることもできません。
砂を払いのけました。
砂の下のサンゴのポリプは一部が死んでいて白い骨格となっていました。

人間の都合人間の都合人間の都合人間の都合

大きさ約5ミリの稚魚が白濁の中で突然私の眼前に表れました。
しばらく寄り添ったあといなくなりました。

人間の都合

誰も知らないところで埋められていく生きものたち。

人間の都合

魚たちも自分の普段住んでいる場所に留まっています。
砂が来ても逃げないのです。

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岩のように見える岩礁はサンゴ礁で地形そのものです。
おそらく数千年もかけてつくられてきたのでしょうが,
これでその営みも終わりです。

人間の都合

イカエギが絡み付いたサンゴを見つけました。
これも人間の都合の産物です。
生きものに負荷をかけ,さらに埋め立てるのです。

人間の都合

稚魚の群れを見つけました。
この先,生き延びられるのか心配です。
彼らが今居るこの小さな海は汚濁防止膜で囲まれているので,
どこかの隙間から外洋に出てほしいと願います。

人間の都合

砂で埋まった護岸でフナムシが息絶えていました。
海を砂で遮断され海に行けなくなったのが原因かもしれません。

人間の都合

春のまばゆいばかりの日射しの中での工事です。
生きものたちはこれから繁殖の季節を迎えるところでした。

私には信じられない光景です。
人間はこれからも正々堂々と地球の上で暮らしていけるのでしょうか。

みなさんはどう思われますか。

人間の都合


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Posted by 有光智彦 at 03:17 │名護市東江 人工海浜
この記事へのコメント
> 私自身のしている行動は反社会的な行動なのかどうか。
いいえ、有光さんのは社会的活動だと思います。
こういう事に無関心でいるのが反社会的です。
Posted by コースケ at 2011年04月10日 09:50
有光 様

いつかは人間中心の社会から、自然中心・地球中心の社会に変わることを願っています。
今はその転換期だと思います。
きっと、有光さんの活動こそ社会的活動であると認められる日が来ると思います。
Posted by アナログアナログ at 2011年04月10日 14:50
コースケ 様

こんばんは。
このごろ考えさせられることが多くなりました。
特に東江に関わることで,県の考え方や
事業に関係するさまざまな背景にある事情が見えています。
おそらく沖縄や内地でも同様な背景があることでしょう。
突き詰めていくと問題の巣窟は国に起因しています。
公共事業の補助金の仕組みや沖縄の風土を考慮しない
事業実施のあり方も沖縄の自然を壊してきた大きな原因の
一つです。無論,振興策の金も沖縄の力を無力化した根元
なのでしょう。その結果が現在の沖縄の現状でしょうか。
根の深い問題があちらこちらに絡んでいることが
わかりました。
しかし,ひるむことなく,この先も見た来た現実を写真とともに
公開し続けるつもりです。
Posted by 有光智彦 at 2011年04月12日 21:47
アナログ 様

こんばんは。
それぞれ気づいた人が,その人の得意なことを続けて,
それを発信し続けることが最も大切だとこのごろよく思います。
どうやら,このようなすさんだ世の中ですが,大洋に浮かぶ
小島のようにぽつりぽつりと輝く一点一点があちこちに点在
しているように思います。
それらが必ず一体になる必要はなく,各小島間での
つながりができ,情報交換し,さらに情報を発信することで,
周囲に波紋となって広がっていくだろうと先日友人からも
聞きました。小さなエネルギーが波紋となり,必ず誰かの受信機に
届いているはずですから,これからも情報を発信し続けましょう。
Posted by 有光智彦 at 2011年04月12日 21:57